逮捕された大久保愉一容疑者(ブログより)
逮捕された大久保愉一容疑者(ブログより)
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逮捕された山本直樹容疑者(ツイッターより)
逮捕された山本直樹容疑者(ツイッターより)

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の林優里さん(当時51)から依頼を受け、薬物を投与し、嘱託殺人の容疑で7月23日、京都府警に2人の医師が逮捕された事件が波紋を広げている。

【写真】山本直樹容疑者

 逮捕されたのは宮城県の開業医、大久保愉一(よしかず)容疑者(42)と東京都の開業医、山本直樹容疑者(43)。

 2人は昨年11月30日、京都市内の林さん宅に知人だとして訪問。現場にいたヘルパーに席を外させ、薬物を投与して、立ち去った。林さんは回復の見込みが少ない難病ALSを悲観し、<耐えられない。安楽死させてください>

 と死の願望をSNSで綴り、大久保容疑者と知り合ったとされる。

 2人のSNS上の書き込みは今も残っており、<自然な最期まで導きますが><訴追されないならお手伝いしたいのですが>とのメッセージを大久保容疑者が送ると、<「お手伝いしたいのですが」という言葉が嬉しくて泣けてきました><決意したらよろしくお願いします>と林さんは応じていた。その後、嘱託殺人が決行されたようだ。

 大久保容疑者は開業する前、厚生労働省で医系技官として勤めていた。当時、交流のあった医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう語る。

「2005年から12年頃まで勤め、医政局医事課の課長補佐も務めました。彼は正義感が強く、患者さんのことを考えずに建前ばかり言う厚労省の役人たちに怒っていました。メディアにも内部情報をリークしていました。課内で犯人捜しが始まっても、『処分されたら、その時に考える』と泰然としてました」

 大久保容疑者が逮捕された翌日、妻で自民党の元衆院議員、大久保三代氏が記者会見などで、「安楽死の本があった」と明かした。大久保容疑者は山本容疑者と『扱いに困った高齢者を「枯らす」技術』という共著も電子書籍で出版。その紹介文には<病室に普通にあるものを使えば、急変とか病気の自然経過に見せかけて患者を死なせることができてしまう>と「安楽死」を示唆する内容が記されている。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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