西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、昨今の投手の傾向に苦言を呈する。
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どのメディアを見ても、プロ野球の話題は打者ばかりとなっている。そりゃそうだ。巨人の岡本和真にヤクルトの村上宗隆など若くて才能あるスラッガーが増えている。以前も指摘したが、各球団の4番打者が本塁打も量産している。
飛ぶボールなのか、という指摘もある。実際にプレーしている選手にしかわからないことだろうが、「打高投低」の現象が出ると必ず議論される。
テレビや解説者として球場で試合を見た時に感じるのは、打者のスイングが強く、大きくなっているということだ。ファンの方もそう思うはずだ。クリーンアップを打つ選手だけではない。コンタクトヒッターでも「強く振る」ことができている。以前のように「ちょこんと」当てて打つヒットよりも、しっかり振り切る選手が増えている。
一方で、投手はどうだろう。体全体を大きく使ってダイナミックに投げるというよりも、セットポジションからバランス重視で投げる投手が目立つ。頭の上に振りかぶるワインドアップか、胸の位置で動き出すノーワインドアップかはどちらでも良いが、走者もいないのに、最初からセットポジションを選択する投手が増えすぎている。
そのセットポジション。右投手なら左足を上げた際に軸足となる右足でしっかりと立てる。つまり安定するということだ。しかし、それでは、体を大きく使う形にはならない。セットでも、ほとんどパワーの出力は変わらないという意見もある。ただ、最初から「安定性」を重視して、可能性を消していないだろうか。打者がどんどん「強く、大きく」なっていくのに対し、投手はどんどん「こぢんまり」となっている。
若い投手こそ、体を大きく使うことを目指してもらいたい。20歳代前半の投手が安定を求めてどうする。体のどこを鍛えれば、もっとダイナミックに投げられるのかなど、見つめ直してもらいたい。30歳前後になって完成された投手が、どう投げようと構わない。体を大きく使う中で、バランスを探る。その作業を捨ててしまっては、スケールの大きな投手にはなれない。