「筑波大の『総合選抜』もそうした入試で定員の約20%を募集する。入試時点で専門を決めかねる生徒には魅力的で、人気が高まるでしょう」(小林さん)

 国立大では他に、河合塾の教育情報部部長の富沢弘和さんから、群馬大が新たに設置予定の「情報学部」も挙がった。基軸となるのはやはりデータサイエンスで、「文理融合型のプログラムも魅力的」(富沢さん)。

 一方、私大で専門家らの注目を集めたのは関西学院大と東京理科大。関学は理工学部を理学部・工学部・生命環境学部・建築学部に分割・改組する。

「新設の理系4学部と文系の総合政策学部は同じ神戸三田キャンパスで、融合効果も期待できる」(小林さん)

 東京理科大は基礎工学部を来年、先進工学部に改組。基礎と先進分野の融合、世界的に注目される「デザイン思考」を採り入れる。専門家は同大が25年にかけて学部・学科の再編を進めている点にも注目する。

 では、文系学部はどうか。ビジネス界ではAIによる業務の代替が急速に広がっている。教育ジャーナリストの後藤健夫さんは「AIで消える仕事」が現実味を帯びる中、今後は社会科学系の学部で学ぶ意味が問われていくと予想。「大学も知識の伝授だけでなく『学び方を学ぶ』カリキュラムに転換することが急務」と見る。

 21年度に関しては商、経済、経営、法、社会などは軒並み人気が低下するというのが専門家の一致した見方だ。大ブレーキがかかるのはコロナの打撃が大きい観光。最近高まっていた国際の人気も下がる予想だ。

「世界的にコロナの感染収束に見通しが立たない中、留学を必須とする大学・学部は敬遠されるでしょう」(安田さん)

 ただし、経済・社会のグローバル化が止まるわけではない。安田さん曰く「グローバルは今の高校生に刺さるキーワード。中長期的にはそのイメージがない学部は伸びない」。後藤さんも「コロナ後にこそ、グローバルな視点や世界に通用するクリティカルシンキング(批判的思考)が求められる」と言う。

 では、そうした観点で注目すべき大学はどこか。後藤さんが挙げたのは、公立大学法人県立広島大が新たな県立大として設置予定の叡啓大と、グローバル・リベラルアーツ(GLA)学部を開設予定の神田外語大だ。

次のページ