そもそも、岩手県はなぜこれまで新型コロナを抑え込めていたのだろうか。その理由については、広い面積に対して人口密度が低いことや、東日本大震災を経験したことで県民の危機管理への意識が高まったことなど様々な要因が考えられてきた。

 そのなかで、岩手の「県民性」も新型コロナの抑止に一役買ったのかもしれない。「出身県でわかる性格と相性」などの著書があり、県民性の専門家でもある矢野新一さん(71)は、岩手県民についてこう分析する。

「農業従事者や豪雪地帯に住む人たちは、あまり外に出ていかずに家にこもる。そのため、読書や絵を描くことが趣味な人が多く、寡黙な人が多いのが岩手県民の特徴です。こうしたことが、思わぬ形で飛沫感染を防いだのかもしれません」

 また矢野さんは、もう一つの県民性として「人柄がよく、求められることに真面目に取り組む」ことをあげる。

「以前、テレビ番組の企画で盛岡市である実験をしました。道路にりんごを転がしたら通行人はどう反応するかを調べたのですが、近くにいる人がすぐに拾ってくれるのです。また、高齢者の仕掛人が、『駅までの道を教えてほしい』と茶髪の若者に尋ねると、『駅まで一緒に行きましょう』と答えていました。親切な方が多いようですね」

 ちなみに、岩手県はこれまでに4人の首相(原敬、斎藤実、米内光政、鈴木善幸)を輩出しているが、いずれも「自分からやりたいと望んだのではなく、周りからお願いされて首相を引き受けた人たち」(矢野さん)なのだという。このことは、「行政から自粛を求められ、真面目に従う県民の姿」と重なるのだという。

 “自粛”に真摯に向き合う県民性。感染防止には、適度な緊張感はもちろん必要だが、それがいきすぎてしまうこともある。岩手県内では「県外ナンバー」の車を持つ人たちが、あおり運転やナンバープレートを折り曲げられるなどの被害をうけたことがいくつか発生している。同様のケースは岩手県に限らず、その他の地域でも起きている。

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