日本中から右翼が集結したり脅迫行為が起きて、東川町民も身の危険を感じ、町長も建立断念を余儀なくされたのではないだろうか。

 それほど、日本の社会は変化したということだ。このままでは、我が国は、平和を願うどころか、率先して戦争を始める国になっても不思議ではない。

 今、米中対立が激化し、遠くない将来に米中戦争勃発という事態も現実味を帯びてきた。国民の多くが嫌中派に転じ、過去の過ちを完全に忘れてしまえば、政府が米国とともに戦争を始めることを国民が止めるどころか、むしろ後押しすることになるのではないか。そうなれば、戦争の勝敗にかかわらず、数十万、数百万の尊い命が失われる。

 今、東川町には、アジアから多くの留学生が集まっている。日本の過去の過ちを正直に認め、世界平和のために努力しようという姿勢は、この町の発展に大きく貢献するだろう。これこそ、日本国憲法が目指す平和国家のお手本ではないか。

 終戦記念日までの10日あまり、日本の過去の過ちに思いを致し、二度と戦争を起こさないために何をすべきか。じっくり考える機会にしたい。

週刊朝日  2020年8月14‐21日号

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など

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