当然だが、脳の奥深くや血管・神経の近くにできたものほど、手術の難度は高く時間もかかる。

「頭蓋底にできた腫瘍は、重要な神経を巻き込んでいる場合があります。神経を損傷すれば機能が失われてしまうため、腫瘍を慎重に取れるだけ取り、どうしても無理なところは残します。円蓋部の腫瘍でも、血管に強く癒着している場合などは、剥離が難しいこともありますね」(坂田医師)

 良性か悪性かの最終的な診断は、切除した腫瘍組織の病理検査で確定する。ほとんどがグレード1の良性腫瘍だが、数は少ないもののグレード2~3で再発を繰り返すものもある。

 グレード2以上や、悪性度が低くても腫瘍が取り切れなかった場合には、手術後、放射線治療を追加することがある。薬物治療は、髄膜腫には無効なためおこなわない。再発した場合には、再手術や再度の放射線治療が必要となる。

「まれに悪性でコントロールが難しいものがあります。それらの髄膜腫は増殖能力が非常に高く、再発を繰り返して最終的には死に至ることがあります」(川俣医師)

 悪性度が低く全摘できても、再発の可能性は全くのゼロではない。進行が遅いため再発までに長い時間がかかり、10年以上を経て再発することもある。治療後は定期的にMRIなどの検査を受け、経過観察を続けることが重要だ。

 なお、脳腫瘍手術に関して、週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2020』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から回答を得た結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。同ムックの手術数ランキングの一部は特設サイトで無料公開。
手術数でわかるいい病院
https://dot.asahi.com/goodhospital/

(文・梶 葉子)

≪取材協力≫
横浜市立大学 市民総合医療センター 脳神経外科部長 坂田勝巳医師
東京女子医科大学病院 脳神経外科 教授・講座主任 川俣貴一医師

※週刊朝日ムック『新「名医」の最新治療2020』より

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