「第2波の到来」と叫ぶだけで、国も地方自治体も休業補償の問題には触れず、閉会中を理由に感染症法改正や特別措置法が国会で審議されることはなく、医療機関への支援も進んでいない。

「疫学調査も蔑ろにしてきたので、発生から拡大のプロセスも全然追えていない。100年以上前に骨格ができた感染症法は、改正しない限り現行の人の行き来と感染拡大のスピードに対応できない。緊急事態宣言は政府による民間活動の制約だから、期間限定と補償のセットが最低条件なのに最初はそれをやらずに失敗した。感染拡大防止を最優先にするためには、真の意味での緊急事態宣言が必要不可欠だと思います」(矢嶋さん)

 経済優先のアクセルをふかしすぎて、気がつけば誰もブレーキを踏んでいない。今襲来している第2波の感染者は、当初は若い世代が多数を占めていたが、徐々に高齢者など世代の幅が広がっている。高齢化に比して重症化、さらには死亡のリスクが高まることはわかっている。医療ジャーナリストでもある森田豊医師はこう指摘する。

「感染者に比べて重症者がまだ少ないのは、嵐の前の静けさという気がしますね。経済を止めるのは最後の手段として、それまでにできるのはPCR検査をとことんやって、感染者を隔離していくことに尽きる。自宅療養は家庭内感染の発生や重症化を見逃す危険性が高いので、そのために中国が武漢に造ったような大きな施設を造って対応すべきでしょう」

 手洗いやうがいや3密を避けるための努力を日々怠らないようにする「頑張り」には限界がある。一方ウイルスは極めて公平に確率的に動き、人に忖度もしない。ファクターXや精神論では、このウイルスに勝てない。(編集部・大平誠)

AERA  2020年8月10日-17日合併号より抜粋

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