では、いくらの親である鮭の産卵数はどれくらいでしょうか? 個体差が大きいようですが、大体千個から6千個と言われています。ヤマメやイワナなどを釣る時にいくらを餌に使うことでわかるように、いくらも他の魚に食べられます。ただ、鮭は川底を尾びれですり鉢状に掘って、そこに卵を産み、砂利をかけて隠します。そうした作業を数カ所に分けて行うことで、リスクを分散させています。
また、シシャモも数千個から1万個を産卵しますが、表面がネバネバしているため、川底の石などにくっついて、水中を浮遊することはありません。
鮭やシシャモは、子育てとまではいきませんが、他の魚に食べられないよう、産む場所を工夫することで、生存の確率を上げているということですね。
一方、スズメダイの仲間は、岩などに産みつけた卵を、雄が孵化するまで他の魚などから守るほか、ゴミを取り除いたり新鮮な水を送ったりして世話をしています。
この時期の雄のスズメダイは卵を守るのに必死なので、ダイバーにも攻撃を仕掛けてくることもあるようです。いわば見張り型の子育てと言えるでしょうか。
ただ、彼らも卵からの孵化までを見守るだけなので、稚魚は他の魚に食べられる可能性はありますので、数百個から千個程度の卵を産みます。
次はさらに進んで、卵をどこかに産みつけるのではなく、自分で抱きかかえたり、口の中に入れて守ったりするタイプです。代表選手は、タツノオトシゴでしょうか。
タツノオトシゴの雌は、一度に50個前後の卵を産み、オスがそれを腹部の育児嚢と呼ばれる部分で、2~3週間抱えて外敵から守りながら育てます。
タツノオトシゴはおなかの部分に抱えるだけですが、口の中に入れて卵を守るテンジクダイなどは、卵が孵化するまでの間、餌を食べることはできません。う~ん、なかなか厳しい子育てですね。
最後は体内で卵から孵化してある程度育ててから出産するタイプです。
多くのサメやエイの仲間(軟骨魚類)がこれに当たります。具体的な仕組みはいくつかに分類されますが、卵のまま産むのではなく、孵化後も母親の胎内にとどまり、母親の体内から出てくる時には、ある程度育っているタイプです。
例えば、ジョーズのモデルとも言われ、人食い鮫として恐れられているホホジロザメは、体長1.5メートル程度の子を一度に数匹産みます。生まれたての子鮫には、既に歯が生えそろっていて、狩りもできるそうです。