米国がテキサス州ヒューストンの中国総領事館を閉鎖すれば、中国は報復措置として成都市の米総領事館を閉鎖。米中対立は新たなステージに突入した。AERA 2020年8月10日-17日合併号の記事を紹介する。
* * *
「米国の最大の敵であるロシアは批判せず、中国ばかり非難するのはなぜか」
7月29日、CNNなどの記者が一斉に声を上げた。武装勢力タリバンの関連組織に対し、ロシア政府が、報奨金を渡して米軍兵士の殺害をしていたという報道について、トランプ大統領(74)がロシアのプーチン大統領(67)との電話会談で追及しなかったためだ。
7月21日、トランプ大統領は4月下旬に打ち切った新型コロナウイルス感染に関する記者会見を再開した。6月下旬から全米の新規感染者数が過去最悪を更新し続けているためだ。しかし、久々の会見が始まって1分も経たないうちにトランプ氏は新型コロナを「チャイナ・ウイルス」と呼び、その後も新型コロナの感染拡大は中国の陰謀だと示唆する発言を続けた。
その最中、トランプ政権は南部テキサス州ヒューストンにある中国総領事館の閉鎖を勧告した。法的な根拠は全く不透明だ。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、米当局者らの話として、ヒューストンの中国総領事館は、米南東部での医学やテクノロジー分野の研究成果盗用を指揮する重要な役割を果たしていたと伝えた。同じころ、米メディアは、中国国内のハッカーが、米国の新型コロナ・ワクチンの研究を標的にしていたと報道していた。つまりヒューストンの中国領事館は、世界を苦しめる新型コロナウイルスの研究成果を盗もうとしたことを示す、状況証拠というわけだ。
トランプ政権の外交担当であるマイク・ポンペオ国務長官(56)は23日、西部カリフォルニア州のニクソン大統領図書館で講演し、こう述べた。
「われわれが今日、(中国に)屈従すれば、私たちの孫たちは中国共産党のなすがままになる可能性がある」