「収支報告書は6月の理事会に提出して承認を得なければなりません。山科理事長に聞くと、『額面どおりに売って処分した』なんてシレッと言う。基本財産を処分するなんて、理事会で話し合ったことすらない。『これは違法行為ですよ。私は理事会で問いただされても、何も答えられません』と言うと、理事長は『数字の帳尻だけ合わせておいてくれれば、あとは自分が説明するから』と言いました。結局、理事会では誰も気づかなかったのか、問題の収支報告書がそのまま通ってしまいましたが......」
株が現金に化けた理由について、前出の山科HD元役員はこう説明する。
「財団のバンダイ株は昨年末ごろにすべて売って現金化しました。それを3月の決算前に買い戻そうとしたのですが、株価が上がっていて買い戻せなかった。それで収支報告書に保有株が記載できなかったのです」
その後、さらに驚くべき事態に発展していく。
3月末時点では、株はなくなったものの、財団の預金口座には約6億円の現金があった。ところが、山科HD関係者によると、その口座の残高が今年9月下旬には5千万円まで目減りしていたというのだ。本当に5億円以上のカネが消えたのか。前出の財団幹部は首を振るばかり。
「私は基本財産の通帳を見せてもらったこともなければ、どこにあるのかも知りません。山科理事長と、理事長の会社の税理士しか触れないのです」
「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」には、
「理事は、一般財団法人の財産のうち一般財団法人の目的である事業を行うために不可欠なものとして定款で定めた基本財産があるときは、定款で定めるところにより、これを維持しなければならず、かつ、これについて一般財団法人の目的である事業を行うことを妨げることとなる処分をしてはならない」(第172条2項)
とある。そしておもちゃ財団の定款にはこうある。
「基本財産は、これを処分し、又は担保に供することができない。ただし、本財団の事業遂行上止むを得ない理由があるときは、理事会において、理事現在数の3分の2以上の議決を経、厚生労働大臣の承認を得て、その一部を処分し、又はその全部若しくは一部を担保に供することができる」(第8条)
つまり、おもちゃ財団の基本財産は、理事会の議決と所管大臣の承認があって初めて動かせる。今回指摘されているような行為は、明白な違法行為なのだ。
◆"愛人"に綴った「一つになろう」◆
北沢栄・元東北公益文科大教授(公益学)はこう指摘する。
「理事会に諮らずに勝手に使った段階で、背任罪にあたることは間違いない。財団は、勝手に使われた基本財産を取り返す必要がある。使途をきっちり調査したうえで、理事長が返さなければ、刑事告発せざるを得ないでしょう」
おもちゃ財団を所管する厚生労働省も戸惑いを隠さない。