リニューアルした箱根登山鉄道の早雲山駅。箱根登山鉄道は7月に全線運転が再開した(C)朝日新聞社
リニューアルした箱根登山鉄道の早雲山駅。箱根登山鉄道は7月に全線運転が再開した(C)朝日新聞社
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姨捨駅から望む棚田。当駅のホームから見下ろす景色は日本三大車窓の一つだ(C)朝日新聞社
姨捨駅から望む棚田。当駅のホームから見下ろす景色は日本三大車窓の一つだ(C)朝日新聞社

 7月23日、昨年の台風19号の被害を受け運休が続いていた箱根登山鉄道の箱根湯本~強羅が運行再開を果たした。文字どおり箱根山に挑む同区間の標高差は445メートル、勾配は最大で80パーミルにのぼる。その急峻なルート越えを助けるのが3カ所のスイッチバックだ。

【写真】日本三大車窓のひとつスイッチバック駅・姥捨駅からの眺望はこちら

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■スイッチバックは面白い

「こうやってジグザグに進みながら坂を登ってゆくんだよ」

 幼いころ、家族旅行ではじめて体験した箱根登山鉄道。途中で反対方向に進んでゆくのをはしゃぎながら眺めていると、父親がその意味を教えてくれたものだった。自宅近所で歩いた山道もそうなっているだろうという説明に、子ども心に「なるほど」と理解したのを覚えているが、なによりも行きつ戻りつする列車が新鮮で面白かったし、いまでもそれは変わらない。

 箱根登山鉄道にあるスイッチバックは、箱根湯本(麓)側から順に出山信号場と大平台駅、上大平台信号場の3カ所。いずれも限られたルート選定のなか急勾配を克服する目的で設けられたものだ。ところが、各地の鉄道路線を見てみると、山岳とも勾配とも無関係と思われるスイッチバックも多く、どうしてそこにスイッチバックがあるのか不思議に思うことはないだろうか。

■そしてスイッチバックが残った!?

 スイッチバックとひとことで言っても、いくつかのタイプがある。分類の仕方によっても異なるが、ココではの次の3通りで分けてみた。

・A:折り返しタイプ
・B:通過線併設タイプ
・C:その他

 箱根登山鉄道の3カ所はいずれもAタイプと考えられ、進んできた列車が駅や信号場のどんづまりで停車したのち、反対方向に折り返しながら先に進んでゆく。同様のタイプに、JR木次線の出雲坂根駅やJR肥薩線の大畑駅と真幸駅、JR豊肥本線の立野駅などがあり、ここに挙げた4カ所はいずれも山岳地に設置されている。出雲坂根駅は2カ所のスイッチバックが、大畑駅はループ線の途中に位置し、山岳路線ならではの鉄道名所としても知られている。

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そのまま直行してもいいのでは? というスイッチバックのワケ