林:アムステルダムの透明な空気とか、一緒に働いてる韓国人青年の佇まいとか、ゲイの子たちの雰囲気だとか、古市君じゃないと書けないような、すごくいいセンスがあると思う。
古市:今まで年に何度もヨーロッパへ行っていたんですが、急に短期の旅行も行けなくなってしまった。だから実際のアムステルダムよりも素敵に書けたのかもしれません。ツイッターで連載していたんですが、ハッシュタグは「うちで旅する」。真理子さんのエッセーや小説も、その時代の空気が内包されていますよね。それって同時代の作家の、しかもちゃんと時代の真ん中にいる人にしか書けないことなんだろうなと思うんです。だからそう言ってもらえるのはすごくうれしいです。
林:私が作家になったときに、編集者の人から「風俗を入れるとすぐ古くなるから、風俗はあまり入れないように」って言われたの。それはすごく気をつけてる。
古市:あくまでも風俗は背景だということですね。確かにメインのテーマは普遍的なことばかり。
林:そう。古市君の小説って、時代をちゃんとあらわしてるんだけど、実は風俗のことは書いてなくて、その加減がすごくいいんですよ。一人ひとりの描写も「こういう子いるだろうな」という感じで、とてもリアリティーがあるし。
古市:書き残しておきたいという気持ちがあるのかもしれません。せっかくこうしてメディアに出て、いろいろな世代の、さまざまなジャンルの方が知り合いにいるので。
林:作家って、生まれつき書く素質を持ってる人が書くものだと私は思ってるんです。書いてると楽しいでしょう?
古市:そうですね。正直、小説を書かなくても暮らしていくことはできます。それでも書いちゃうってことは、好きだからですよね。
林:それが実はとても難しい。テレビのコメンテーターで“自称作家”と言いながら、実は何も書いてない人もいますよね。たぶんテレビにパワーを吸い取られちゃってるんですよね。
古市:ああ、いますね(笑)。○○さんとか、○○さんとか……。
(構成/本誌・松岡かすみ 編集協力/一木俊雄)
※週刊朝日 2020年9月4日号より抜粋