古市:テレビ見ながらもちゃんとインプットしているんですね。真理子さんの小説には魅力的なキャラクターがたくさん登場しますよね。モデルがいることも多いんですか。
林:モデルもいますけど、私も分配して書いてるところがある。血を分けてる感じ。古市君は周りに濃い人がいっぱいいるんだから、その人たちをモデルにしてもいいんじゃないですか。薄めたり濃くしたりしながら。
古市:確かにそうですね。自分のちっぽけな頭で考えるよりも、現実の人のほうがはるかに予想外の行動をとりますよね。
林:今度の小説は……。
古市:『アスク・ミー・ホワイ』です。ビートルズの曲からとりました。
林:どんどんうまくなってきてますね。文章にリズムがあるし、固有名詞の使い方がいいし、やっぱり都会の真っただ中にいる人か、時代の先端にいる人じゃなきゃ書けないようなキラメキみたいなものがありますよ。ただ、途中がちょっと長すぎるかも。
古市:ありがとうございます。この本はコロナが広がった3~4月に書き上げたんです。海外にも行けないし、人とも会いにくい時代だから、ヨーロッパを舞台に、人と人とがちゃんと結ばれる話を書こうと思ったんです。結果的に、僕の作品とは思えないくらい甘い話になりましたね。アムステルダムの日本料理店でバイトをする男の子が主人公。自分では冴えない生活だと思っていたけれど、移住してきた元人気俳優と知り合うことで、自分に自信を持ち、世界がどんどん変わっていくという話です。男同士のラブストーリーなんですが、あまり特別なものとしては描きませんでした。友情と愛情、異性愛と同性愛って、そんなきれいに分かれるものではないと思うんです。
林:古市君がノルウェーに留学してたというのは知ってるけど、小説の舞台はオランダのアムステルダムなんですね。
古市:アムステルダムに友達が住んでいたんですが、すごく居心地のいい街でした。よく言われるセックスとドラッグだけじゃなくて、ビザが取りやすいので世界中から若い人がたくさん集まっています。新しい文化も生まれやすく、街にも活気がある。去年までは毎年のように行っていましたね。