私ははたと思い至った。このストップの現状を人々は見ることができ、見て理解することができるが、それを一コマ一コマ早送りモードで見るとよりはっきり見えることに。

 10年後、20年後に同じような悲惨な出来事が起きれば、私たちが直面しているような場面がコマ送りで展開することだろう。それは新たなウイルスの来襲かもしれないし、水源の汚染や大きな堤防の決壊、原発の爆発かもしれないし、およそ私たちが予測し得ないなんらかの人災かもしれない。

 いずれにしても私たちはそうした災害を今と同じように迎えるに違いない。過ちを悔いることもなく、災難が来襲するたびに私たちは自分が無事でよかったと思うだけだ。いつも「内部通報者」が現れる幸運を待ち望みつつ、一人ひとりの中国人は依然として今次の人災同様「丸裸で疾走する(ストリーキング)」だろう。

 べつに世間を騒がせようと過激なことを言っているわけではない。

 とりあえず、2月2日に私がネットで見つけた、武漢の新型ウイルス流行に関する時系列表を見てみよう。時間を2019年12月1日の時点まで巻き戻す。

■12月1日
金銀潭病院で初の患者収容、華南海鮮市場への立ち入り歴なし

■12月10日
さらに3人発病、うち2人は華南海鮮市場への立ち入り歴なし

■12月30日
武漢市衛生健康委員会が内部通知。武漢に原因不明の肺炎発生、華南海鮮市場に関連
李文亮ら医師8人が微博の友人グループ内で同僚らに注意喚起

(注:この時点で最初の患者発生から1カ月。李文亮医師ら8人はそれぞれ善意から注意喚起を発した。それで私たちはこの新型ウイルスを理解し、1カ月間の出来事が説明できた。武漢のウイルス感染者はすでに恐るべき数に上っている)

■12月31日
華南海鮮市場を消毒
国家衛生健康委員会専門家グループが武漢に到着
武漢市衛生健康委員会が原因不明の肺炎27例をWHOに通報、「人から人への感染は未確認、医療スタッフの感染も未確認」
協和病院が呼吸器伝染病隔離エリアを設立、1フロア24床ではすぐに不足となり、随時4フロアに拡張

(注:武漢市当局が最初に情報を公開したのが医学的な究明が間に合っていない時点でないのは明らか。絶対に詐欺だ。その動機は、私たちがわざわざ知恵を絞って分析を試みるまでもない、彼らは無数の動機から一般大衆を欺こうとするものだ。問題なのは、無数の人の健康や生命に危険が及ぶしれない伝染病に直面しても、依然として慣例的に詐欺的手段を用いたことだ。それは体制の邪悪さを反映している)

○阿坡(A.PO)/一武漢市民。77日間の武漢都市封鎖(ロックダウン)を経験し、この手記を執筆。「阿坡」は本名ではない。全世界に多大な迷惑と災難をもたらした新型コロナウイルスについて、一人の健全な精神を持つ中国人としてお詫びの気持ちを表すために、英語の「apologize(お詫びする)」から取った。全世界の国々が中国からのお詫びを待ったとしても、それが述べられることはない。だか、この名前を用いて手記でお詫びの気持ちを表したいと考えている。

訳:kukui books

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