面白いことに2019年、中米貿易戦争が激化すると中央電視台映画チャンネルは「抗米援朝(アメリカに抗し朝鮮を助ける)」の戦争映画を1週間連続して放映した。アメリカは攻撃に堪えきれず最終的には中国が勝利を勝ち取るという寓意を示しているのだ。
同時に日本映画も帰ってきた。同じように1週間連続して放映されたのは高倉健の映画作品だった。このたびの新型コロナウイルスの流行発生直後、いの一番に支援の手を差し伸べたのは日本の政府と民間だった。大量の援助を提供してくれたことで中国にはホットな議論と日本に対するよい評判が沸き起こった。
皮肉にも、巷のうわさではいくつかの製作会社が悲鳴を上げているという。彼らがこの1、2年のうちに巨費を投じて製作した抗日ドラマが全部、政府によって放映禁止となって元を取れなくなったからだそうだ。大いにありそうな話だ。
■若年層で好感度上昇
新型コロナウイルスの流行爆発で、私たちは日本人が友好的であるばかりか気前もいいのを知って驚いた。「山川異域、風月同天(山や川は別の場所にあるが、風や月は同じ空にある意)」――これは武漢の都市閉鎖後いち早く日本から武漢に贈られたマスクを梱包した段ボール箱に書かれていた句だ。多くの中国人は、日本人が古い漢語を使う力を持っていることにも驚嘆した。
ネットでは(もちろん若い人が多い)、日本に対する好感度が上昇した。人々がその後「抗日ドラマ」を見てどんな感想を持ったかは想像するのが難しいが、ほどなく「抗日ドラマ」がテレビで放映される頻度は減るのではないかと思う。
共産党政府は「仇恨教育(敵への憎悪を高める教育の意)」に力を入れている。それは中国人自身が感情的に求めるものでもある。中国人の日本に対する見方については、私自身がいい例だ。
20年前、私が初めて日本へ出張する話をもらったとき、私は断った。もちろん日本が嫌いだったからだ。日本への敵視が中国の絶対的な主流であり、政治的にも正しいのは間違いない。テレビに毎日登場する日本人は狂暴悪辣で無慈悲に人を殺すイメージを抱かせ、むしろ恨みを持つなというほうが難しいぐらいだ。よほど理性的でない限り水には流せない。そもそも理性的でないのが中国人だ。そういうわけで過去30年のうち25年、私はずっとぶれずに日本嫌いだった。車も家電も日本製を買ったことがなかった。