しかし2014年、私はハワイへ行き休暇を過ごした。パールハーバー記念館には多くの日本人観光客がいた。その数はアメリカ人観光客と半々に見えた。みな静かに見学していた。ワイキキビーチでもバカンスを楽しむ日本人に出会った。アメリカ人に劣らぬ数だった。

 中国人のロジックでは「日米必ずや一戦あり」となるはずなのだが、ひょっとして太平洋戦争はそれほど悲惨な戦いではなかったのか? 日米間の遺恨はどこへ行ってしまったのか? 私は、若いころ日本車、日本製品をけっして買わないぐらい反日だったことを思い出してとても恥ずかしくなった。

■仮想敵のレッテル

 2017年、私は初めて日本の土を踏んだ。日本が想像していた通りの文明国家であることを強く印象づけられた。いろいろな部分で私の予想を超えていた。その前の数年間の反省と慚愧がさらに重たく我が身にのしかかった。私のように自立した思考ができると自任する人間でも、中国にいては分からないのだ。文明の進歩が遺恨と責任転嫁からは生まれないと分かるのに20年を超える時間を要した。文明は進歩しなければならない。まず私たちは、文明は進歩し得るものだと信じなければならない。すでに辛く苦しい努力を積み重ね顕著な成果を上げている国民がいるのを認めなければならない。

 中国に対する私の理解では、東アジアには文明国家への進化モデルが二つ、成功例としてあるが、依然として弱肉強食の社会に生きる中国人は多くの問題点から抜け出せずにいる。このたびの新型ウイルス流行で日本人が示した態度は、中国人に、とくに若い中国人に、日本人に対する新しい認識、考え方を芽生えさせた。しかし、国家装置が少し力を入れて導けば、私たちの遺恨はおそらく完全に、全部アメリカに移されるだろう。

 共産党政府は永遠に仮想敵を必要とする。中米貿易戦争の勃発から、政府は日本に貼っていた仮想敵のレッテルをすでにはがし始めている。アメリカ、これが次の重大目標になるのは間違いない。残念ながら非常に多くの中国人の気持ちにぴったり合う。

○阿坡(A.PO)/一武漢市民。77日間の武漢都市封鎖(ロックダウン)を経験し、この手記を執筆。「阿坡」は本名ではない。全世界に多大な迷惑と災難をもたらした新型コロナウイルスについて、一人の健全な精神を持つ中国人としてお詫びの気持ちを表すために、英語の「apologize(お詫びする)」から取った。全世界の国々が中国からのお詫びを待ったとしても、それが述べられることはない。だか、この名前を用いて手記でお詫びの気持ちを表したいと考えている。

訳:kukui books

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