韓国ドラマは物語を練りに練る。そうでなければ一話1時間20分から30分に及ぶ物語は作れない。「物語爆弾のしわざ」というタイトルで、作家の井上荒野さんは「(『愛の不時着』を観るため)目の前に人参をぶら下げられた馬のような気持ちで仕事をしている」とその魅力に取りつかれた日々を書いているが(日本経済新聞7月12日付)、展開を急がず、主人公と相方との距離感を絶妙に取りながら伏線を周到に配置し、どの話にも必ずひとつカタルシスを持たせている。偶然の出会いが幾重にも重なり、それが必然になって最後には幸せをもたらす仕掛けになっている。
この『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』の主人公は、カンヌ国際映画祭のパルムドールとアメリカアカデミー賞作品賞などを受賞した『パラサイト 半地下の家族』出演のイ・ソンギュンと、シンガーで女優のIU。戦時中、日本の植民地支配下で「徴用工」として働かされた韓国人の補償をめぐって日韓政府は激しい対立が続いているが、一方で世界に通用するレベルの韓国ドラマを毎夜楽しむ日本人も多い。
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
※週刊朝日 2020年9月4日号