今年3月末まで約5年半にわたって本誌の編集長を務め、いまは販売部長として毎夜の酒席など多忙な日々を送っている。編集長時代には、東京マラソンへの出場を機にジョギングを始め、この1年で10キロの減量に成功した。172センチ、72キロ、体脂肪率は50歳標準値内の18%を維持している。
プチ努力で下半身を鍛えた甲斐あってか、深夜のフットワークも軽快なようで、銀座の消息筋からは多くの武勇伝が漏れ聞こえてくる(詳細未確認)。
ならば、さぞかし「お強い」はずであろう。
真偽を確かめるべく訪れたのは、東京都千代田区にある「三番町ごきげんクリニック」。アンチエイジング(抗加齢)が専門で、血液中の栄養バランスやホルモンバランスを分析して、栄養指導やサプリメントの処方など、さまざまな"若返り策"を提案してくれる。
「性年齢診断」は診療科目ではないが、検査で出たさまざまな数値によって、強さもわかるというのだ。
診察室に入った前編集長に、澤登雅一院長(43)はさわやかに語った。
「性の状態を測ることで、身体に潜むさまざまな危険性の察知につながることがあります。男性でも女性でも、健康でなければ、性もしっかりしないわけですからね。自分が興味のある切り口で健康状態を確認するのは重要なことなんです」
なるほど、"局部的"な問題ではなく、全身の健康に関係してくるのか。でも先生、肝心の診断結果を早く教えてー。
「えー、50代後半ですね。正直に言っちゃうと、ごめんなさいね、山口さんは『弱い』です」
呆然とする前編集長に、澤登院長は理由を説明した。
「血液中の亜鉛が足りていませんね。アメリカではセックスミネラルとも言われているほど、性に関係しているのです。性に関係してくる男性ホルモンは基準値内ですが、数値が下限に近いですね。50歳なら、もっとあっていいんです」
優しい口調で続くダメ出しに、前編集長の様子がおかしくなってきた。うっすら涙目にも見える。そして、口をついて出たのは意外な事実だった。
山口 「実は......、30代後半くらいから、弱くなるというか......いわゆる『中折れ』が時々あって、やばいなと思っていたんですよ。朝勃ちもね、最近はほとんどないんです。たまの朝に『あっ、きょうは元気じゃん!』みたいな。40代に突入したころから、仕事の忙しさもあって女性への興味がなくなってきたというか、情けない限りです......」
澤登院長 「山口さんは外食ばっかりですか?」
山口 「昼はコンビニか社食の定食で、夜は飲み会ばっかりですね」
澤登院長 「お酒も原因ですね。アルコールは栄養素を壊してしまうんですよ。コンビニ食やファストフードの添加物も栄養素を壊すから、男女問わず現代人の2~3割は亜鉛の量が基準値を下回っているんです」
澤登院長によると、普段から自宅でバランスのいい食事をとっている高齢者より、コンビニ食中心の若者のほうが、精力が弱いケースが多くあるそうだ。
現在は農地がやせてしまい、野菜自体の栄養素も激減している。例えば、ホウレンソウの鉄分は60年前の7分の1しかなく、しっかり食べているつもりでも、気づかないうちに栄養不足に陥っているという。
山口 「(精液の)量も減っちゃったんですよ。18歳のころは毎日3回くらいドバッと出せたのに、35歳過ぎると、1回出すと(同じ日の)連チャンがだめなのはもちろん、1週間くらいは性欲そのものがなくなっちゃう。やっぱり、ドバッといっぱい出たほうが性的に気持ちいいんですけどね」
18歳でギトギトだったころの前編集長を想像してしまったが、澤登院長によると、生活の乱れで、現代人は精子の数も減少傾向にあるのだという。少子化社会にあって、ニッポン男児を取り巻く環境は厳しい......。
澤登院長 「80代でお盛んな男性もいます。精子の数を検査されて『俺のおたまじゃくしはまだ元気だ』なんて喜んでいましたよ。年齢のせいにせず、しっかり対処すればいいんです」
前編集長が真剣に質問を始めた。精力復活に加え、ある"病"を恐れているのだろう。
最近、40代半ば~50代前半にかけて「男性更年期障害」になる人が増えている。無気力や鬱症状を伴い、仕事に影響するばかりか自殺との因果関係も指摘されている。
澤登院長によると、男性ホルモンの減少が原因で、精力の低下は更年期障害のサインである可能性があるという。前編集長にとっても他人事ではないのだ。
山口 「何をしたらいいんですか? コンビニで売っている亜鉛のサプリメントや、サントリー広報の知人に薦められた『マカ』を飲んだこともあったけど、横着な性格なんで飲んだり飲まなかったりで......」
澤登院長 「マカは効果としてはあるんですが、個人差がありますよね」
山口 「スポーツ紙とかで、『ここで一発』とか、天狗のお面をかぶった広告が載ってるじゃないですか。本当に即効性があるんですか?そんな夢のような食品って、本当にあるんですか」
澤登院長 「たいていの商品は、誇張されてますね」
山口 「ですよね。『赤まむしドリンク』も飲んだけど、変わらなかった。要は偽薬効果というか、精神的なものなんですかね」
澤登院長 「それは一理あります。男性は気分的なものが大きく、だめだと思うと、ホントにだめになってしまう。飲んだから大丈夫だと、気分的に安心するのは大事なことですよね」
澤登院長が勧めたのは、レスベラトロールのサプリメントと亜鉛を摂取し、アルコールを控え、運動を続けることだった。レスベラトロールは赤ワインに含まれるポリフェノール成分で、多くの美容効果がわかっているが、勃起障害(ED)にも効果があることがマウス実験で判明したそうだ。
前編集長が、救いを求めるように尋ねた。
「ここでがんばれば、また『元気』になりますかね」
澤登院長は、笑顔で激励した。
「太ってたころは、もっと弱かったはずです。80歳だろうがなんだろうが、性を強くすることは可能なので、努力し続けることが大切ですね。あと、勃起しないというのは、血管が拡張しないということで、動脈硬化のサインの可能性もあります。全身につながる問題として考えてみてください」
山口 「仕事にプライベートに充実した50代を過ごすには、まず下半身から!? 早めに修復しないといけませんね」
心身ともに"仁王立ち"するために、まずは「朝勃ち日記」でもつけましょうか。そういえば、武勇伝の真偽は......もういいか、あくまで噂だし。 (本誌・國府田英之)