高地トレーニングの効果が期待できる低酸素発生装置を使って据え置き型自転車「ワットバイク」をこいだり、加速度計を腕につけて動作のスピードを測定しながらウェートトレーニングを行ったり、日常のトレーニングに楽しみを持たせられるような工夫を取り入れました。選手は意欲的に取り組んでいます。
自己ベストを出すためには、日々の練習で自分の限界を突破するチャレンジが必要です。インカレを目指す水泳部の学生たちは、その姿勢が表れている。みんなで頑張ってベストを出したい、という一体感も生まれています。
一方、東京五輪のメダルを狙う社会人の選手たちは、限界へのチャレンジが十分にできているとはいえません。本当に目標としていた大会がこなかったことを、いつまでも自分の言い訳にしている選手もまだいると思います。
「たとえ五輪が中止になっても頑張れ」と言い続けてきた私も、心の中ではどこかに「いつも通りには要求できないな」と思っていたところがありました。
インカレに向けて必死に頑張る学生たちから、私自身も刺激を受けています。直近の目標は8月29、30日の東京都特別水泳大会。2月以来となる久しぶりの大会で、選手たちは新たな一歩を踏み出します。
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
(構成/本誌・堀井正明)
※週刊朝日 2020年9月4日号