ミレトスの朝賀拓視社長
ミレトスの朝賀拓視社長
経費チェックサービス「SAPPHIRE(サファイア)」=ミレトス提供
経費チェックサービス「SAPPHIRE(サファイア)」=ミレトス提供
日本CFO協会の調査でわかった企業不正の傾向=ミレトス提供
日本CFO協会の調査でわかった企業不正の傾向=ミレトス提供

 仕事では、交通費や取引先との会食費といった様々な経費がかかる。領収書をもとに会社に請求できるものの、問題となるのが“不正請求”だ。これをAI(人工知能)が見抜いてくれる時代がすぐそこまで来ている。

【調査結果】意外と多かった!不正を見聞きした経験

 大半の会社員はまじめに請求しているが、私用のタクシー代や飲食費などを会社に負担させようとするケースは後を絶たない。領収書を小口に分けるなど、ばれないように工夫する人もいる。最高財務責任者(CFO)ら企業の財務・経理担当者からなる日本CFO協会が2017年にまとめた調査では経費精算のごまかしや水増し発注など約7割が実際に社内で不正を見聞きした経験があると答えた。

 経費の担当者が一つひとつチェックしようとしても、膨大な数の経費申請の中から怪しいものを見つけるのは至難の業。だが、そんな状況が一気に変わるかもしれない。人間に代わって、AIが経費をチェックするというのだ。

「コロナ禍の影響もあって経費精算の効率化のニーズは高まっています。大手企業などから問い合わせが増えています」

 こう話すのはベンチャー企業、Miletos(ミレトス、東京都目黒区)の朝賀拓視社長だ。

 ミレトスは2016年6月の設立で、経費チェックサービス「SAPPHIRE(サファイア)」を昨年5月に始めた。独自に開発したAIを活用して不正な経費利用を見抜くもので、名称は硬くて割れにくい「サファイアガラス」にちなむ。サファイアの宝石言葉が「誠実」であることにもあやかったという。

 このサービスでは、顧客の企業から提供される勤務実績や請求項目などのデータをもとに、AIが不正を見抜く。問題があると判断した申請者に説明を促すところまで、自動化できるという。

 例えば出張旅費の精算の場合、日時や交通手段、利用事由などをもとに、“カラ出張”かどうかを瞬時に判断。二重申請や統計的に不自然な点などもチェックする。

 取引先との会食費の場合、領収書や利用人数などをもとに、一般的な金額から逸脱していないかどうかを見分ける。店名や住所などをもとに、風俗店といった不適切な店の利用も見抜くという。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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