飛行機内は感染防止のため、客席は3分の1程度にしか埋めず、ディスタンスがとれるよう配慮されていた。待機期間中は電話またはLINEで健康状態のフォローアップがなされるシステムになっていた。このように日本の水際防疫作戦は、かなりの程度、完成されているといえる。
■第3波、4波への影響…
むしろ驚かされたのは、待機期間が明けて出かけてみた東京の街の様子だった。人々はマスクこそつけてはいるものの、電車や街路は人混みになっているし、レストランでは店内で普通に会食しているし、大声で笑い合ったりもしている。コロナに対して過剰に反応しすぎることが反省されたせいか、コロナ慣れしたせいか、油断やスキが目につく。
これでは第3波、第4波の感染ピークが繰り返される可能性が大きい。日本では重症化率が低いとはいえ、感染者数が増減するうちは、事態が収束したことにはならず、社会的、経済的な影響も長引くことになる。ウイルスは自然の一部であるがゆえに根絶することはできないながら、「正しくおそれる」ことが重要だ。
○福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授。1959年東京都生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授を経て現職。著書『生物と無生物のあいだ』はサントリー学芸賞を受賞。『動的平衡』『ナチュラリスト―生命を愛でる人―』『フェルメール 隠された次元』、訳書『ドリトル先生航海記』ほか。
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