ニューヨークのタイムズスクエア前(gettyimages)
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福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授 (c)朝日新聞社
福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授 (c)朝日新聞社

 メディアに現れる生物科学用語を生物学者の福岡伸一が取り上げ、その意味や背景を解説していきます。

【写真】筆者の福岡伸一さん

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 ニューヨーク市の新型コロナウイルス感染者数の推移はベルカーブを描いて急速に低下し、収束に向かっている。4月には連日1日数千人規模の感染者を記録したが、今は200人規模で推移している。

 市の人口は約800万人なので東京都に比べると一回り小さいが、都市部の人口密度は高い。それでも第2波が来る気配はなさそうだ。これも厳しい都市ロックダウン(自粛要請ではなく、罰則つきの命令)と、市民たちの節度ある行動(あれだけ自由気ままだったニューヨーカーがみなマスクを着用し、社会的距離の順守に従った)によるものと思われる。

■感染地図が示す社会の分断

 一方、ニューヨーク市をZIP code (郵便番号)ごとに細かく区分けした感染地図を見ると、見事に色分けされていることがわかる。

 マンハッタン区やブルックリン区の西側の色は薄く、これはつまり人口あたりの感染者が少ないことを示している。対して、ブロンクス区やブルックリン区東部は濃い色となっており、人口あたりの感染者が多い。これはそのまま収入や住環境などの社会的格差を反映したものだ。色の濃い地域には、リモート勤務ができない現業に就く人々が多く住み、屋内の家族密度も高い。それが感染者数の高さとなって現れているのだ。コロナウイルスがあぶり出した社会の分断の一局面といえる(以下サイト参照)。
https://www1.nyc.gov/site/doh/covid/covid-19-data.page

 ながらくニューヨーク市内に足止めされていた私(不用意に動くのは危険と判断し、客員研究者を務めるロックフェラー大学があるマンハッタンのアッパーイーストエンドと呼ばれる地区のアパートにずっと自己幽閉状態となっていた)も、市内の規制が緩和され、海外渡航の状況も改善、日本への飛行便も増便されたので、ようやく8月最初に日本に戻ることができた。

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日本の水際防疫はすばらしい