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人生はみずからの手で切りひらける。そして、つらいことは手放せる。美容部員からコーセー初の女性取締役に抜擢され、85歳の現在も現役経営者として活躍し続ける伝説のヘア&メイクアップアーティスト・小林照子さんの著書『人生は、「手」で変わる』からの本連載。今回は、後輩や部下など自分より若い人たちに話をするときのヒントについてお伝えします。
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最近、60代の企業経営者の方々から、「年の離れた若い世代とどのように接していくべきか」というご相談を受けることが増えました。
若い世代に仕事の仕方を伝えてあげたい。仕事の経験談、ピンチの乗り越え方を伝えてあげたい。でも昔話は嫌がられる。そしてヘタにこちらが説教をしているような感じになると、いまは“パワハラ”と言われかねない。どうしたものかと悩まれている方は結構いらっしゃるのです。
昔話や過去の栄光は、確かに、仕事の場で長々と語られても困りますよね。私の場合、普段お仕事をさせていただく方の90%は自分よりも若い方々ですので、なるべく、まず「聞き役」に回るようにしています。そして相手の話を聞きながら、ときどきそこに自分の経験を「スパイス」として挟み込む。そんな感覚で会話を進めていくようにしています。
年長者が自分の経験談を語るときは「長文」でなくていいのです。むしろ相手の話の間に差し込む「俳句」と思って、短い話の中に気の利いた言葉や印象に残る言葉をまぶすような感覚で語ったほうがいい。
年長者が先に「長文」で語り始めてしまうと、年下のひとたちはなかなか、質問を差し挟めなくなってしまいます。
会話は「ミルフィーユ形式」にするのがいいと私は思います。若い方が疑問に思うこと、知りたいことから話してもらって、そこに年長者は「長文」ではなく「俳句」=五・七・五のイメージで簡潔に応える。それに対して若いひとが質問したら、また五・七・五で返していく。
過去の栄光話も少しずつ切り刻んで提供していけば、若い世代にとって参考になる側面がいろいろ見えてくるものです。年長者が年下のひとたちに語るときは、“相手の人生の役に立つ”語り方を考えることが大切なのです。