「安心目的の人たちを含めると、対象人数が一気に膨らむので、効果とコストについて慎重に考える必要がある。我々も不安を解消したいというニーズにも応えたいが、検査資源は有限なので、現状は優先順位をつけざるを得ない。世田谷区の唱える『誰でもいつでも何度でも』は現実には難しいのです」(釜萢氏)

 釜萢氏によれば、メレコムが実施している「1日あたり最大500検体」という数字は、医療資源を枯渇させる規模ではないというが、「こうした企業が100社参入すれば、500検体×100社で5万検体になる。そうなれば話は別」とも述べた。受け放題という仕様で余分な検査が促されれば、資源の枯渇につながりかねないという。

「優先順位の低いところに検査資源を割くことについては憂慮する。その点で医師会のスタンスは、(楽天の検査キットに言及した)4月の段階と変わりません」(同)

 国立大付属病院感染対策協議会の会長を務める佐賀大学医学部の青木洋介教授は「(受け放題プランは)多少ビジネスライクだが、いろんな考えがあっていい」と話す。

「不安を解消するために検査を受けることは、医学的にはあまり実のあることではないが、これはあくまでも専門家としての意見。一般の人の『安心を買いたい』という心理を、専門家的な視点だけで否定すべきではない。保健所のキャパシティーは限られていて、受けたくても受けられないという苦い経験をした人が実際に出てきたからこそ、こうして需要が生まれている。時と場合に応じて一般のニーズや意見も聞き入れる柔軟な思考があってもいい」

 民間企業と医師会、双方に隔たりはあるものの、目指す先は「コロナ収束」という同じ目標だろう。その検査は本当に必要なのか。私たち1人1人が考えるべき時代になっているのかもしれない。(取材・文=AERAdot.編集部・飯塚大和)