顔の距離も、対面とオンラインでは大きく違う。リアルな会議では、顔を近づけ合うことは少ないし、全員と真正面から向き合うわけではない。ところがオンライン会議では、ほんの40、50センチのところに全員の顔が真正面に並ぶ。これにプレッシャーを感じるという人も多い。

「オンラインは互いの目と目の距離が近い。その結果、自分の空間、すなわちパーソナルスペースが侵害されているように感じるのです」(橋元教授)

 もちろん、オンラインならではのメリットもある。上司も部下も同じように並ぶオンライン会議は、リアル会議よりもフラットで、率直に意見を言い合うのに向いている。日本ファシリテーション協会フェローで『オンライン会議の教科書』の著書がある堀公俊さんはこう語る。

「以心伝心、忖度、阿吽の呼吸。こうしたものに頼ってきた組織ほど、オンライン会議をうまく進めることができません。会議は組織の縮図。組織全体のコミュニケーションをトータルデザインするなかで、オンライン会議のルールを各社がそれぞれ設定する必要があります」

 オンライン会議を活用せざるを得ない今は、新たなルールを作って組織を変えるチャンスだとも言う。

「そのためには、オンライン会議はリアルの代替ではなく、似て非なるものだと認識することが大切です」(堀さん)

 たとえば、リアルな会議ではわざわざ挙手をしなくても、その場の空気を読んで発言すればよい。だが、オンライン会議だと、発言が重なると音が重なり聞き取れなくなるため、一人が発言している間は他の人が発言できない。発言したい人は挙手してファシリテーターに指名されてから話し、話し終わったら「以上です」で締めくくったほうがスムーズだ。一人が長々と話し続けることがないように、「発言は要点をコンパクトに、1分以内で」と決めるのもいい。(編集部・高橋有紀、野村昌二)

AERA 2020年9月7日号より抜粋

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