日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「インフルエンザワクチン接種の重要性」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。
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9月に入った矢先、「今年のインフルエンザワクチンは、いつから接種できますか?」と外来診療の際に質問されることが多くなりました。「10月初めを予定しています。」とお答えすると、「今年の冬は、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症が同時に流行する可能性があると聞きました。なるべく早くインフルエンザワクチンを接種したい」とほぼ全員がこうおっしゃるのです。
8月下旬、厚生労働省は高齢者や子どもなど優先度が高い人たちに対して、早めにインフルエンザワクチンを接種するよう呼びかける方針を明らかにしました。また、今年の冬はインフルエンザと新型コロナウイルス感染症が同時に流行することへの備えとして、インフルエンザワクチンへの希望者が例年より増えると見込み、インフルエンザワクチンの供給量は昨年の冬より7パーセント多い約3178万本、最大約6356万人分を供給できるとの見通しを発表しました。
インフルエンザワクチンは、インフルエンザへの罹患や重症化を防ぐために接種する予防接種です。日本では、65歳以上の人や60~64歳で基礎疾患を有する一部の人で、インフルエンザワクチンは定期接種の対象となっています。それ以外の人は任意接種であり、費用は自己負担です。
「インフルエンザワクチンを接種したのに、インフルエンザにかかってしまったから、もうワクチンは接種しません」そうおっしゃる方がいらっしゃるのですが、インフルエンワクチンは接種したからといって、インフルエンザに絶対かからない、というワクチンではありません。インフルエンザの発症を予防することや、発症後の重症化や死亡を予防することに関して一定の効果があると報告されており、インフルエンザの予防接種は重症化を予防する点で有効であるとされています。