イラスト・竹口睦郁 (週刊朝日2020年9月18日号より)
イラスト・竹口睦郁 (週刊朝日2020年9月18日号より)
ストレートネックチェック/巻き肩チェック (週刊朝日2020年9月18日号より)
ストレートネックチェック/巻き肩チェック (週刊朝日2020年9月18日号より)

 五十肩などの肩トラブルの背景に、姿勢の悪さがある。『四十肩・五十肩は自分で治せる!』の著書がある「さかいクリニックグループ」代表の酒井慎太郎さん(柔道整復師)は、

「特に気を付けたいのは、“ストレートネック”と“巻き肩”。これらを改善するストレッチが五十肩の予防に有効です」

 と話す。気になる人はまずチェック(下記)をしてみよう。

 ストレートネックとは、本来、体の前に向かって緩やかにカーブしている首の関節が、まっすぐになって前傾した状態をいう。原因はスマホやパソコンを使うときの姿勢の悪さで、横から見ると、頭が前に出て、あごが突き出ている。

 なぜ、ストレートネックが肩トラブルの原因になるのか。酒井さんは、

「頸椎は、体重の約1割にあたる頭の重さをうまく分散して支えています。ところが、ストレートネックになると、その負荷が分散されず、肩まわりの関節に集中してしまうのです」

 と説明する。首が正しい位置にあれば、頭の重さがうまく分散され、負荷がかかりにくいが、ストレートネックで頭が前に出ると、とたんに重力の負荷が加わって、3倍もの重さになるという。

 体重が60キロなら、頭の重さはボウリングの球と同じくらいの約6キロ。ストレートネックだと、約18キロの重さを首や肩が支えなければならなくなるわけだ。当然ながら、五十肩などの問題が起こりやすい。

 一方の巻き肩は、肩の位置が前にずれて背中が丸まった状態だ。これもスマホやパソコンを使うときの姿勢の悪さで生じる。肩が前に出ることで背中側にある頸椎や胸椎(きょうつい)、肩まわりの関節が常に引っ張られた状態になるため、緊張が続く。これが五十肩の原因になる。

 この二つの問題を解消するための方法が、「あご押し」と「うしろ手」のストレッチ。前者がストレートネックの、後者が巻き肩の解消法になる。

「これを1回30秒、気がついたときに行います。『あご押し』では、少し強めにあごを押すと効果的です。『うしろ手』は、手のひらを内側にしてお祈りをするように指をからます。肘を伸ばしたまま、上げていきます。90度を目標とします」

 この二つのストレッチは道具も不要で、いつでも、どこでも実践できる。毎日、少しずつでも続けることで、ストレートネックや巻き肩が修正され、首のカーブや肩の位置が元に戻るという。

 もう一つ、寝ている間にできる五十肩予防・解消法も教えてもらった。それは“枕を外して寝る”というものだ。

「枕を外して仰向けに寝るだけで、首の位置が正しくなり、肩も開きます。さらに姿勢を整えたい場合は、両肩をできるだけ首から遠ざけ、胸を開いて布団の面に両肩が付くよう意識するとよいでしょう。頭の左右にたたんだタオルを置いておけば、寝返りをして横向きになったときに首や肩に負荷がかかりにくくなります」

(本誌・山内リカ)

週刊朝日  2020年9月18日号より抜粋