長期休校中に、インターネット動画やテレビの視聴、ゲームなどのスクリーンタイムが増え、学校再開後も元には戻らずに悩む親子は少なくない。

 ネット・ゲーム依存専門の回復支援サービスを提供するMIRA‐i(ミライ)には、休校明け前後の5、6月にこれまでの約2倍の相談が寄せられた。団体の代表で公認心理師の森山沙耶さんは言う。

「子どもたちは楽しみにしていたイベントや部活の大会などがなくなってエネルギーの持っていき場を失い、主にシューティング系ゲームが発散の場になっています。子どもは大人に比べて、欲求をコントロールする脳の前頭葉が未発達で、急速に依存が進行することもあります」

■生活リズムが崩れた

 都内に住む小学5年の女児の母親(44)も、ゲームとテレビ漬けの娘を心配する。コロナ前までは学校から帰ってくると、友だちと外遊びや互いの家を行き来して夕飯前までめいっぱい遊んでいたが、「休校を機に娘の生活リズムは完全に崩れました」(母親)。

 休校中は他に楽しみもない娘に「やめなさい」と言うのも忍びなく、一日中スクリーンの前で過ごさせていた。だが、学校再開後の各家庭のコロナへの意識に差があり、娘の友だちを家に呼んでいいものか、逆に家にお邪魔していいものかと悩み、遊びにくくなった。学校から帰宅した娘はなんとなくテレビをつけるかゲームをしてだらだらと過ごしてしまうという。

 休校期間中に実施された国立成育医療研究センター「コロナ×こどもアンケート」の第1回調査では、テレビやスマホ、ゲームを見ていた「スクリーンタイム」が1日4時間以上の子どもが全体の31%だった。第2回調査ではスクリーンタイムについて質問していないが、保護者の自由記載からは学校再開後もテレビやゲームの時間が減らずに悩む様子がうかがえる。

 前出の森山さんによると、特に注意したほうがいい「依存症」のサインは、(1)時間が以前と比べて増えた(2)成績が落ちる、学校や部活へのモチベーションが低くなる、生活リズムが崩れるなどの変化が出ている(3)やめさせようとすると暴れたり癇癪(かんしゃく)を起こしたりする──の3点を挙げ、こう指摘する。

「昼夜逆転や親子のコミュニケーションが取れない状況になると、回復にも時間がかかります。依存はコントロールの障害で、子どもの意志が弱いわけではない。物理的な対策を講じ、環境を整えることが大切です」

次のページ