私が「息子さんは田舎に帰ってきますか」と尋ねると、「お盆のときだけ。でも、とんぼ返り」だそうだ。そりゃそうだろう。
その後、菅本人にインタビューした。菅は政治家としての半生や自民党内事情、政策課題については能弁だったが、私が父について切り出すと、急に口が重くなった。
──お父さんの存在感は大きいですよね?
「わからない……」
──今でいう「自分探し」が長かったのでは?
「東京に出ればいいことがあるかなと思って出てきたが、思い出したくない青春」
和三郎が言っていた学生運動のデモに巻き込まれ、連行された件を聞いてみた。
──取り調べを受けた?
「見物に行った新宿で、何でもないのがわかって、すぐに出したっていう感じ」
――見物に行って逃げ遅れて捕まった?
「そんな感じ」
インタビューの最後に菅が放った言葉が印象的だった。「私は寄り道ばっかりやってきた。寄り道がよかったんじゃないかな。いま思うと」
それはきっと、自分に向けて放った言葉だったろう。このルポの詳細は15日発売の週刊朝日(9月25日号)に掲載している。(文中敬称略)
(朝日新聞記者・大鹿靖明)
※週刊朝日 2020年9月25日より抜粋