──取り調べを担当したのは大阪地検特捜部の遠藤裕介検事だった。
遠藤検事が聞いたのは三つです。
●「凛の会」会長の倉沢邦夫さんに会って、障害者団体であることを認める証明書の発行を頼まれたか
●国会議員からの依頼を受けた上司の指示を受けなかったか
●上村さんに証明書の作成を指示しなかったか。
倉沢さんについては記憶にないが、仕事柄、毎日たくさんの人と会うので、覚えていない可能性はある。しかし、実体のない障害者団体とわかっていて、証明書の作成を指示したことはない、と答えました。すると、遠藤検事は非常にあっさりと供述調書をつくり、「今、逮捕状を請求しています」と言いました。そのときは、否認するとこんな簡単に逮捕される段取りになっているんだ、とひとごとのように感じていました。それよりも、自宅に残してきた娘(19)に、このことをどう伝えるべきか、ということが気にかかっていました。「母親の逮捕」というショッキングな事実を、テレビや新聞で知るということだけは避けたかった。しかし、電話をかけるのはダメだという。
女性の検察事務官が私の代わりに娘に連絡してくれる、というので、携帯電話の番号を探すふりをして、検事の目を盗んで、海外出張中だった夫にメールで「たいほ」と送信しました。漢字に変換する時間もありませんでした。これで、夫が何とかしてくれると、ホッとしました。
こういう話をすると、あいつは神経の太いヤツだって思われるので、もうちょっとかわいそうな人でいたほうがいいかなと思うんですけど。(笑い)
──その後、逮捕状が執行され、大阪拘置所に移送されたのですね。
移送の車を待つため、座っていると、急に涙がこみ上げてきました。でも、泣きたくなかった。泣くと弱気になり、心が揺れますから。隣についてくれていた女性事務官と話をして気を紛らわせました。移送の車に乗る直前、事務官が「マスコミがたくさん来ているようです。顔を隠すためのマスクがありますが、使うかどうかは村木さんが決めてください」と言ってくれました。私は一瞬、どうしようかと思ったのですが、平気な顔して出ていこうと決めました。幸い、車は、後部座席のカーテンが閉められていて中の様子がわからないようになっていました。ただ、カーテン越しにものすごいフラッシュがたかれているのはわかりました。