勾留中に証拠開示が行われ、関係者の供述調書をすべて読みました。当時、私の上司だった塩田さんが、「国会議員の先生から頼まれて村木へ指示した」と証言しているくだりや、部下だった上村さんが、私から指示を受けたと供述している調書を読んで、正直怒りを感じたことがないとは言いません。「なんでみんなウソをつくんでしょう」と、接見に来てくださった弘中先生に怒りをぶつけてしまったこともあります。でも、冷静になって調書を読んでいくと、明らかに客観的事実の間違いがいくつもあった。例えば、塩田さんは「障害者自立支援法案をスムーズに成立させるため、当時野党の大物議員だった石井一(はじめ)先生の言うことを聞くしかなかった」と、この証明書発行の動機について語っている。しかし、この事件が起きたとき、自立支援法案はまだ影も形もなかった。これは厚労省の審議会の議事録を見ればすぐにわかる。そのとき、この事件がおかしいということを証明できるんじゃないか、という期待がわきました。

──その後、証人として出廷した関係者が次々と供述調書の内容を翻す証言を始める。事件の実行犯とされた上村被告は「偽の証明書の発行は自分一人で実行した。いくら検事にそう訴えても聞いてもらえなかった」と涙ながらに村木氏の関与を否定した。

 実は、あのときに娘も傍聴に来てくれたんですが、彼女が家に帰ってから「ママ、私、もう上村さんに怒ってないよ」と言ったんです。私もまったく同じ気持ちでした。彼の取り調べのつらさとか苦しさとか、伝わってきました。検事からの質問には情緒不安定になっていた彼が、弘中先生や弁護団の先生の質問には落ち着いて答えている様子も手にとるようにわかった。

 上村さんが法廷で被疑者ノートについて証言しているとき、私は泣いていました。後で、弘中先生に記者から「村木さんは花粉症ですか?」と質問があったそうです。私は泣いているのがわからないように、何度も鼻や目にハンカチを当てていたので、そう思ったんでしょう。上村さんは、自身の被疑者ノートに、国井検事から「上村さんだけがウソをついている」「(上村さんは)全然覚えていないから、他人の力を借りるしかない。多数決でまかせて」と言われたと書いています。私も国井検事から「あなたの証言だけが浮いている」と言われました。

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