福島さんたちとフェミな話をしながら、つくづく、フェミニズムは語ることなのだと胸が熱くなるのを感じる。黙らされてきた側、脅されてきた側が、もう怖くない、黙らないとあげる声が、私たちをまた饒舌にし、支え合う力になる。

 今日(9月14日)、自民党新総裁が決まった。気の早い私の友人などは「安倍さんの方がよかった」と言いだしているが、派閥の力にものを言わせ、大切なことを夜に決めていくような政治に、女性の声が届くのはいったいいつなのか。

 そんななかでも、希望の話はある。最近、某大手メーカーで働く友人から聞いたこと。現場の販売員は100%女性、お客さまも100%女性の売り場、だけど決定権を持つ地位には男性しかいないという古すぎる組織。そこで20~30 代女性の集客を目指したプロモーションが行われることになった。男性課長は広告代理店に丸投げ、広告代理店のチーム長も男性。そこで出てきたアイデアはこんなものだった。

 彼氏に振られた28歳、仕事か恋かに迷う28歳、家に引きこもり気味な28歳……つまりは30代手前で人生が狂いはじめた女たちの話が、ほんわかしたムードで描かれる内容だったという。女性が興味あるのは、恋、結婚だけで、彼女たちの人生を豊かにするのは男と、キラキラ光ってるモノという前提。

 興味深かったのはこれが世に出る前に、現場の女性たちが「はぁ?」と怒りの声をあげたことだった。女性をバカにしてます? これ、女性がつくった企画でもムカツクけど、男性だけで考えたのであればバカにされたと思ってもっと不愉快だよ! と。あげた声はさらにまた一つの声をひろい、現場の女性たち全員の抵抗で企画そのものが消え、今は女性の声を聞く、女性たちのチームができたという。女性たちの「はぁ」力(←と呼びましょう)が組織を動かすこともある。そんな希望を持てる話だった。

 フェミな思考は、日常を変え、私たちの尊厳を守るものでもある。脅されても、「被害妄想か?」と笑われても、「あなたが女性だからではなく、あなた個人に問題があるからそういう目にあうのだ」などと被害を矮小化するような力にも黙らず、「はぁ?」と低く唸る。そんなフェミ力を信じたいと、さまざまな世代の女性との語りを通して思う。菅政権に対抗する力はフェミニズム。言い切ります。

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表

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