また、このケアハウスでは低所得者への配慮も行っている。ある高齢者が入居する際に、必要となる50万円を施設長が工面した。入居後に毎月1万円ずつ返済をし、5年後に滞りなく完済したという。当時の施設長で、現常務理事はこう言う。
「この人は併設しているデイサービスに通っていて、真面目な人と知っていた。話し合いをして、年金収入の13万円を有効に使ってここで生活できるように決めた。ここは3食付きで、お風呂もある。職員の見守りもある中で穏やかに暮らしています。いま本人は預金が増えていくのを楽しみにしています」
ケアハウスは費用が安いがゆえに低所得な人ほど利用したいところだが、生活保護を受けていると、入居を断られるケースが多い。生活保護費用もケアハウスの建設費・運営費も税金から出ており、二重に補助金の恩恵を受けることができないためだという。
しかし、例外もある。神奈川県相模原市にあるケアハウスでは、生活保護受給者でも受け入れを行っている。市の高齢・障害者福祉課に尋ねると「入所の可否はその施設に任せている」という。コロナの影響や豪雨による災害でやむなく生活保護に頼る高齢者が増える危惧もあり、今後こうしたケアハウスはより重要になるだろう。
ケアハウスでは孤独にならない機会は多いが、注意も必要だ。定員数20名以下といった少人数のところでは、入居者同士のつながりが既にできており、新しく入居した人は溶け込みにくいといった声もある。また、女性が多い施設では、男性が居づらくなるというケースも。定員数や男女比なども確認しておく必要がある。
広告などが少ないため、ケアハウスは意外と知られていない。これを機に老後の選択肢の一つに入れてほしい。(取材協力/本誌・吉崎洋夫)
※週刊朝日 2020年9月25日号