確かに、今の高齢者は元気だ。60歳を過ぎたら「終活」なんて早すぎる。

「終活より大切なのが就活だと思っています。会社で出世した男性にありがちですが、頼まれたからやってやるという姿勢ではなく、自分からこういうことがしたいと表現するくらいがいいと思う。年を取ったからといってネガティブにならず、できることを積極的にやっていく。それが老活です」

 坂東さんは『老活のすすめ』で、この林住期の充実した過ごし方を具体的にアドバイスしている。

 その一つが「親友」ならぬ「新友」づくりだ。

「もちろん親友は人生の宝です。でも現実には親友の多くは同世代ですから、やがて世を去っていきます。だからこそ新友が必要になるのです。新しい出会いも大事にして、仕事、勉強、趣味など新しい場に自分を置けば、必ず新友との結びつきが生まれてきます。悠々自適の隠居生活をしていては、そうはならないのです」

 その2が「無償労働のすすめ」だ。「男女共同参画白書」によると、有償労働の割合を世界と比較すると、日本は家事やボランティアなどの無償労働は女性に多く、大半の「家住期」の男性は有償労働ばかりしているというデータがある。坂東さんは、老活のためにはこの傾向を改めるべきと言う。

「男性は働き盛りの家住期に稼いでナンボの価値観に縛られてしまっているので、定年退職した林住期になって人とつながる力が育っていないことに気づくことが多いのです。働き盛りのころから、もう少し無償労働の価値を大事にすれば、老活もスムーズになると考えています」

 新友づくりも無償労働も大切なことはわかっている、でもそれがなかなかできない、というのが、大方の反応だろう。

「年を取ると、この“どうせもう年寄りだし”と、やらない言い訳がどんどん上手になってしまうけど、それでもやってみようという気持ちになれるかが、老活の大事なポイントです」

 と呼びかける。

「小さなことでもいいので『自分もやればできるんだ』という実感を積み重ねることが大事。定年退職後に起業して成功する、みたいな満塁ホームランをいきなり狙うのではなく、頼まれたことを引き受けたり、ちょっと困っている人にちょっとしたおせっかいをするくらいのことから始めることを勧めたいです」

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