エッセイスト 小島慶子
エッセイスト 小島慶子
この記事の写真をすべて見る
花王はSNSで批判の声が出ていた「ロリエkosei-fulプロジェクト」を終了したことを発表した(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
花王はSNSで批判の声が出ていた「ロリエkosei-fulプロジェクト」を終了したことを発表した(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【この記事の写真の続きはこちら】

*  *  *

 ほぼ生理がない状態になってから、6年以上経ちます。子宮内で黄体ホルモンを放出する小さな器具を装着してから、たまにわずかな出血があるぐらいで、ほぼ月経フリーに。クオリティー・オブ・ライフが劇的に改善しました。48歳なので年齢的にはそろそろ閉経しても不思議ではありませんが、一足先にすっかり卒業した気分です。

 これまで生理でどれほど多くの時間的体力的精神的社会的経済的損失を被(こうむ)ってきたかを思わずにいられません。ホルモンに振り回されては毎月死にたいと思いつめ、交際相手を攻撃し、仕事の現場でふてくされ、痛みと強烈な眠気に襲われ、信用を失い、関係を損ない、自尊心を傷つけました。なんで私の生理はこうなんだろう。人生はいつも生理前か生理中か生理後で、なんでもない時がないなんて、あんまりだと思いました。

 でも、他人の生理と比べたことはありません。そもそも知らないし、体が違うのに比べても意味がないからです。ただただ、自分の生理から解放されたいと思っていました。

 生理は人それぞれ、個別のものです。それに関する社会の理解が足りず、制度が対応できていないのです。

“生理は個性”とうたって批判された生理用品のキャンペーンが中止になったそうですが、個別性を“個性”という言葉に置き換えると、あたかも解決するべき課題が存在しないかのような印象を与えてしまいます。さらに“女性同士で違いを認め合おう”と呼びかけたことにより、生理に伴う問題は同性間の感情的な対立であるかのように印象付けてしまいました。生理は個別のものですが、非常に多くの当事者がいる健康問題です。性差別や働き方に深く関わる社会課題でもあります。個別かつ普遍的な生理について、タブーでもキラキラでもなく、リアルに語れる場を増やしていきたいです。

小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中

AERA 2020年9月21日号