「ここ2~3年は観光地化が進んだんですね。外国人相手の店が増えて、従来とは違う雰囲気になってきました。ところがコロナのため、そういう店が次々とお休みになり、シャッターを閉じたところが多くなってしまっています」
昆布や佃煮を扱う、京こんぶ千波の井上武さんもそれに続ける。
「近年は、通りを食べながら歩く外国人が多かったんです。それがまったくいなくなった。そのため地元の人は、買いやすくなったと喜んで、もともとのお客さんは減っていませんが」
良し悪しはともかく、新型コロナの影響で、錦市場が、本来の姿を取り戻しているともいえそうだ。そう聞くと「ぜひとも買い物に行きたい」と思うのだが、やはり二の足を踏むのだろう。
井上さんが続ける。
「東京・横浜・大阪には、錦のファンがたくさんいるんですよね。観光や出張で京都に来たら、必ず寄って買って帰るという人が。そういう人が京都に来てくれませんので……。ただし幸いうちは日持ちのする品を扱っていますので、取り寄せの注文はコロナ禍以降にかなり伸びてきています」
今秋は、錦市場から逸品を取り寄せるのが正解なのだろう。
ちなみに本誌が京こんぶ千波の商品ですすめたいのが「青山椒入りちりめん山椒」。ちりめんじゃこの10%にも当たる大量の丹波産実山椒が入る。また大ぶりな松茸が入った佃煮「松茸昆布」を食べると、贅沢な気持ちに浸れる。値段は張るが、京都への旅費を考えればお安いものだ。
リーズナブルに感じて、何でもかんでも取り寄せればよいというわけでもない。八百屋・四寅の堀裕一さんが注意をしてくれた。
「今年は雨と猛暑の影響で、野菜の育ちがあまりよくないようです。おいしい旬の期間が、例年と比べてかなり短いですね。それだけに、旬を逃さないタイミングで買っていただければ」
旬についてわからない場合は問い合わせて、最良の品を取り寄せるようにしたい。
(本誌・菊地武顕)
※週刊朝日 2020年9月25日号より抜粋