後に、三浦さんは役者として、現場で経験から身に着けるもの以外に、演劇論などの「学び」から得られる技術や視野も必要だと思い始める。29歳のとき、繰り返し読んだ本として選んだ一冊は、小説でも、漫画でもなく、「メソード演技」という演技の本だ。
「10代のころからお芝居の仕事をさせてもらってますが、これまで演技論を勉強したり、ワークショップを経験したことがなかった僕にとっては、非常に興味深く、ためになる本でした」(ダ・ヴィンチ 2019年4月号/29歳)
この発言とは前後するが、2017年にはイギリスに短期留学。英語の習得が第一目的だったが、語学学校に通いながらもワークショップに参加し、ボイストレーニングを行い、美術館や舞台に足を運んだことを明かしている。こうして自ら学ぼうとする姿勢は、池松さんとの出会いが少なからず影響しているのかもしれない。
20代前半のころ、同年代だけでなく、一回り以上歳の離れた俳優からも刺激を受けていた。インタビューでは「自分にうそをつかない」といった趣旨の発言がたびたび出てくるが、ドラマ「陽はまた昇る」で共演した佐藤浩市さんに言われた言葉だという。
「浩市さんから『自分にうそはつくなよ』と言われたんです。その言葉いろんな意味で響きました。実はこれまでの僕は、自分のまわりで何かおかしいと思うことがあっても、『自分には関係ない』とどこか切り離して、逃げてしまうようなところがあったんです。でも、今は変わろうと思っています。自分の至らない点も認めながら、相手のダメなところをちゃんと伝える。そうすることで、高め合っていきたいんです。そうすればきっと、本当の絆ができていくんじゃないかと」(サンキュ! 2011年8月号/21歳)
役者として活躍の場を広げていったとき、この佐藤浩市さんの助言を大事にしたことは想像に難くない。例えば、初めて外国人演出家と作り上げた舞台「地獄のオルフェウス」では、主人公を演じた女優・大竹しのぶさんとの実力の差を素直に認めていた。
「(稽古で)大竹さんの演技を見て、心から感動したんですよね。子どもの頃からお芝居をやってきて、経験を積んだつもりでいましたが、純粋に感動して……。まだまだだなあと思いました」(婦人公論 2015年5月12日号/25歳)