神足:ホント、好き勝手書かせてもらったから、取材したお店から「訴えるぞ」なんて抗議されたこともあったよね。

西原:担当の編集者には本当にご迷惑かけました。でも、編集部は私たちを徹底的に守ってくれたから好きなことが描けた。当時の穴吹史士編集長なんて、「大丈夫だから、もっと言ってくれ」とまで言ってくれたでしょ。今思えば、もっとソフトにやるべきだったってやっとわかったけど(笑)、当時は子供だったかも。いつも酔ってたし(笑)。

──お店から抗議が来るのは想定していたんです(笑)。屋形船でてんぷらを食べる取材に同行した日は、私も初めて浴衣を着て出勤したのが思い出深いです。

西原:細長いものは鰻しか知らなかったから、私はアナゴがおいしくて感動した。それとドブ川だと思ってた東京の川がきれいだったのにも驚いた。

神足:それから30年近くたつ。いろいろなことがあった。いろいろな人生体験をした。今のボクは9年前にくも膜下出血になって半身不随の体になった。自分では動くこともできないし誰かに手伝ってもらわなければ生きてもいけない。しゃべることもほとんどできない。サイバラも結婚して家族もできたし、その旦那さんがアルコール依存症で苦労もしたし死にも直面した。サイバラ自身は人気漫画家として不動の地位を築いたし、今や恋もしてる。あのころに比べたら、だいぶ二人とも大人になったもんだとつくづく思う。

(聞き手/朝日新聞社の当時の担当・勝田敏彦 構成/本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2020年10月2日号より抜粋

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