神足:初めて「みんなの介護」の担当編集者がこの連載コラムの執筆依頼に来たのは、朝日新聞で行われた講演会の会場だった。しゃべれないボクが何百人の人の前で講演会を開く。そんな新しい試みにドキドキしていたとき、その編集者はホテルの控室にやってきた。「ぜひコラムを書いてほしいのです。イラストは西原理恵子さんでお願いしようと思ってます」と言う。ボクは「へえ、サイバラ。王道すぎないかな」と、かなりびっくりした。

──「恨ミシュラン」を読んでくれてたんですね。

神足:その編集者は、昔からサイバラとボクのファンだったそうで、介護のコラムだけど、自由にやってくださいと言う。なんだか「恨ミシュラン」のときみたいで、嬉しくなって、喜んで連載を引き受けた。この連載のイラストはサイバラじゃなきゃ描けなかったと思う。

西原:連載が始まって、私はコータリンの書いた原稿を読んでカットを描くことになったんだけど、正直言って人の原稿をちゃんと読んでカットを描くのは初めて。これまでもカットを描く仕事はやってきたけど、ほとんどまともに読んだことはないのに(笑)。

──昔の神足さんの原稿はどうでしたか。

西原:「恨ミシュラン」のころのコータリンはオシャレなふりして怖かったよ。文章も怖い。それなのに、今は優しいというか、シンプルになった。「汚いコータリン」が「きれいなコータリン」になってて、今の原稿読んで泣かされたりすると、腹が立つよ。愛とか家族とか、つらいこと楽しいことなんかを、すごくキレイに出して書いているのよ。なんか、チャックを開けてみたら中に少年のコータリンがいるみたいな感じでね(笑)。

神足:今回の連載で書いた原稿の初めての読者はサイバラ。イラストを描いてもらうために、できたての原稿をまず読んでもらう。今の率直な気持ちを書いた原稿を読んだサイバラが「『恨ミシュラン』のころと違うキレイなコータリンがいてずるい、泣いちゃったじゃないか」と言ってきたことは確かにある。でも逆にボクが、サイバラのイラストに泣かされたことも何回かあった。

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