――退所後に不自由を感じることはありますか?
いい点と悪い点の両方が存在します。前はすごく守られていたし、本人の価値を落とさないように細かくブランディングしてくれていました。ただウイークポイントもあった。スピード感であったり情報伝達のやり方などです。1990年代や2000年代だったら通用したかもしれません。でもネット文化が世界中に浸透した時代に、日本の大手事務所のやり方ではちょっと厳しいかなと思います。プロもアマも含めてネット上には魅力的なコンテンツがあふれています。そんな環境でクローズされた世界でやっていてはいつか取り残されてしまう。
――そうした問題点をジャニーズ事務所と直接話し合ったことはありますか?
僕が声をあげたところで変わるようなものではありません。たとえ試みたとしても聞いてくれなかったと思います。僕はアウトローなやり方をしてきたので。アイドルの鏡みたいにノースキャンダルで、事務所の言うことを聞くキャラだったら聞く耳を持ってくれたかもしれません。僕自身ですら「どの口が言ってんねん」と思いますし(笑)。だから仕方がないと思います。退所したのも僕が前に進む決断をしただけのことで、ジャニーズ事務所には本当に感謝しています。
――そうした「やり方」についてこられないファンもいます。
うそは言いたくないので本音を話しますが、何か新しいことにチャレンジするときに、それについてこられないなら仕方がないと思っています。一方で、正直に自分を表現したからこそ、興味を持ってくれたり、応援してくれたりする人も必ず現れます。ジャニーズ時代のファンには感謝の気持ちとともに、ついてきてほしいという願いもあります。でも、その気持ちを優先させて前に進まないというのは僕の人生ではない。だから、今の手越祐也を応援してくれる選択をした人たちを少しでも幸せにするという考えしかありません。
――“人気アイドル”の立場を捨てたことに未練はありませんか?
すべての世界において共通することだと思いますが、どれだけ人気や実績があったとしても、チャレンジを続けないと、いつか必ず落ちるときが来ます。企業でもアイドルでもアスリートでも同じです。これ以上、今の自分を続けていても、ルックスもそうだし体力も気持ちも、「新しいことをしないと、これ以上は上にいけない」って心底感じてしまったから決断に至ったんです。僕の場合は32歳で新しい道を選択をしましたが、今の自分を変えなきゃいけないという時期は必ず誰にも訪れると思います。だからこそ、僕は絶対に成功したい。そこまで言った僕が成功しないと、夢をみせられないし、みんなが新しいことをしなくなる。新しい何かが生まれない芸能界、日本になってしまう。自分に限界を感じた時、「チャレンジすればまだやれるんだ」って思ってほしいんです。そういう考え方を「生意気だ」と感じる人もいると思いますが、僕はある種の責任を感じながら活動しています。だから、やっぱりついてこれない人、「現状維持がいい」って感じてしまう人には、申し訳ない気持ちはありますが、「しゃーないな」です。