人生はみずからの手で切りひらける。そして、つらいことは手放せる。美容部員からコーセー初の女性取締役に抜擢され、85歳の現在も現役経営者として活躍し続ける伝説のヘア&メイクアップアーティスト・小林照子さんの著書『人生は、「手」で変わる』からの本連載。今回は、忙しさの中でも、身近なひとを思いやる大切さについてお伝えします。
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私は、自分の年齢を気にして人生の可能性を捨ててしまうことに、反対です。「もう年ですから」と何でも及び腰になることはありません。チャレンジする気持ちを失わないでください。そう皆さんに呼びかけたいので、講演会などでは「年齢なんて忘れましょう」という話をよくします。
でもこれは、決して自分の現状と向き合わないということではありません。誰だって年はとっていきますし、家族も親族も年をとっていきます。そしてだんだん、病気や介護の問題と直面する。これは、どんな人間でも通る道です。
「皆、いつまでも若い頃のままではない」
この事実は認識しておかなくては。そして、たとえ予期せぬできごとが起きても、きちんと対処していくことが大切です。
私がまだ会社勤めをしていた頃、実家の義理の母の具合がだんだん悪くなってきました。介護は、私の兄の妻である、義理の姉が一手に引き受けて頑張ってくれたのですが、やはり姉の負担は大変なものでした。
そこで私が、勤めが休みの日に手伝いに行くと、義理の母は私の来訪を大喜び。私は24時間一緒にいる人間ではありません。だから義理の母にとっては“楽しいことだけ運んできてくれる娘”に思えるのです。
そしてその反動か、同居している義理の姉の介護方法などについて、義理の母が不満をもらし、義理の姉に当たり散らすことが目立つようになりました。そのたびに義理の姉は、無言になるばかり。
こんなことが続いたら、介護で疲れている義理の姉のこころは傷つく一方ですし、義理の母と義理の姉と私の人間関係も悪い方向に流れていってしまうかもしれない。私は頭を悩ませました。