「コンビニ百里の道をゆく」は、51歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
9月16日に菅新政権が発足しました。菅義偉首相は、新型コロナウイルスへの対応と経済再生を最優先課題に掲げ、「デジタル庁」の創設や規制改革なども進めていくとしています。私もデジタル庁には大きな期待を持っています。
これまでも、日本のデジタル化の遅れについて危機感は広く共有されていましたが、なかなか前に進まなかった。それがコロナ禍で浮き彫りになり、もう待ったなしです。
自民党の総裁選が始まってすぐに菅首相からデジタル庁の発想が出たのも、官房長官時代にご自身が強く感じておられたのだと思いました。
デジタル化はもちろん業務の効率化にもつながりますが、それ以上に新しい価値の創造に結びつきます。ローソンでも以前から商品発注などでデジタル、AIを活用しておりますが、まだまだです。お客様にご評価いただける価値創造をめざし挑戦し続けます。
また、規制緩和のスピードアップにも期待しています。例えば、胃腸薬などの第2、3類の医薬品の販売には登録販売者が現場にいる必要があるため、一部店舗での導入です。オンライン診療も進んでおり、これらの販売についてもデジタルの活用で、登録販売者が現場にいなくともしっかりと相談ができ、平時も、そして災害時も必要な医薬品がより身近なお店で入手できるようになると思います。
今の規制やそれに基づく実態は、デジタル技術がなかった時代にできたものが多いのではないでしょうか。今の、あるいはこれからのデジタル技術を前提にした規制や実態が整備されることを期待しています。新しく創設されるデジタル庁のリーダーシップで今ある権益に縛られず、それ以上の新しい価値の創造につながるデジタル化と規制改革の実現を願っています。成長する明るい日本を造っていくために政官財が連携し、大いに挑戦していきたいです。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2020年10月12日号