この116万人はどこに消えたのか。非正規雇用者だった人の行き先は、(1)正規雇用(2)役員(3)完全失業者・非労働力人口、のいずれかとなる。
同様に2月と7月で比較すると、完全失業者は38万人増え、その結果完全失業率は2.3%から2.9%へ上がった。一方、役員を含む正規雇用者は32万人増えた。とはいえ、コロナ禍の中で多数の非正規雇用者が正規雇用や役員になったとは考えにくいだろう。また主婦やリタイアしたお年寄りなど、失業率に関与しない非労働力人口は1万人減っていた。
調査では「休業者」の人数も公表している。仕事はあるが1週間の調査期間中に限り仕事をしなかった人たちで、失業者とは違う。2月の196万人から4月には597万人にまで増え、7月は2月より24万人多い220万人だ。
こうした数字を踏まえ、116万人の非正規雇用者はどの層へと移ったと考えられるのか。
東京大学の川田恵介准教授(労働経済学)は「これまでの不況と比べても立場の弱い人が大きな影響を受けている今回のようなコロナ禍では、そのように細かく分析する価値は大きいのですが、公表されているデータのみでは正確に特定することはできません」と言う。
■「非労働力化」の可能性
そんな中、あくまで推測ではあるが、大蔵(現・財務)省で官僚も務めた一橋大学の野口悠紀雄名誉教授は非労働力人口の動きに注目する。
今年の2月と7月で、非労働力人口は前述の通り1万人減とほぼ横ばいだった。ただ、非労働力人口はここ数年、年初が多くその後徐々に減る傾向がある。そのため、2月と7月では7月の方が少なくなるのが通常だ。その差は2019年は67万人、18年は85万人、17年は134万人、16年は111万人と7月の方が圧倒的に少ない。
非正規雇用者数が実数で公表されているため、ここまでは非労働力人口も実数で比較してきたが、こちらは季節的な要因を排除した「季節調整値」も公表されている。季節調整値で見ても近年は7月の方が少なくなっているにもかかわらず、今年は7月のほうが49万人多いという異例の状態となっている。