大人気ドラマ「半沢直樹」で紀本平八常務を好演した段田安則さん。俳優としてどんなキャリアを積んできたのか、そしてその素顔とは。作家の林真理子さんが迫ります。
【前編/半沢“紀本常務”段田安則の次なる挑戦とは? 名作舞台で演出も】より続く
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林:お芝居でもけっこう段田さんを拝見させていただいてまして、前に「コペンハーゲン」を見たら、難しいセリフをずっとおっしゃってましたよ。そのあと「ワーニャ伯父さん」とかも拝見しましたけど、よくあんなに難しいセリフを滔々(とうとう)とお話しされるなと思って。
段田:僕もほかの人のを見に行ったときは、よくまあペラペラしゃべるもんだなと思って感心するんですけど、自分のときは、しょうがないから一生懸命覚えるんですよ。商売ですから(笑)。
林:でも、理解してなかったら覚えられないですよね。
段田:そうですね。若いときは、台本の句読点にもちゃんと意味があって、書き手の方はそのつもりで「、」を打ってるんだろうから、読む側はそれを大事にしないといけないという意識があって。だけど最近はもうトシなもんで、セリフをちゃんと覚えるよりも、意味がちゃんと伝えられたらいいんだという感覚になりました。
林:段田さんは野田秀樹さんの「夢の遊眠社」出身なんですよね。そのことを知ってる人、あんまりいないんじゃないですか。
段田:そうかもしれないですね。もう30年近く前ですからね。
林:私、「夢の遊眠社」って1回ぐらいしか見てないけど、途中でセリフがぜんぜんわかんなくなって、ああいう理不尽なセリフをずっと言ってたわけでしょう?
段田:ええ、理不尽なセリフをね(笑)。
林:あの膨大な理不尽さから、今おっしゃった句読点一つ間違えてもいけないというところへ行くって、すごいことだったんじゃないですか。
段田:あのときも野田秀樹さんが書いたホンどおりにちゃんと言おうという意識でやっていたんですけど、意味がわかってるのは野田秀樹さんだけで、「ここはこうなんだよ」っていう説明もないし、こっちも聞かないし、記号を覚えてしゃべるだけみたいな感覚でやってましたね。もともと僕は、お芝居らしいお芝居というか、昔からのお芝居をやりたいと若いころから思ってましたので、「なんで遊眠社に入ったんだよ」ってことになるんですけどね。