3位のホテル、ニューグランドなどホテル各社も多く上位入りした。ゼノ社の分析は前提となる各シナリオによって影響を受ける事業の比重が大きい会社ほど数値が高まる傾向がある。国内の地域差が考慮されていないためホテル業者同士の影響度を比べるのは難しい面もあるが、いずれにせよ、国内外の観光客の増加という「特需」により、収益は着実に高まる。
観光客が増えれば交通需要も増える。自動車や家電などに使われるプラスチック部品を手がける11位の天昇電気工業や、13位のTVEなどが上位に食い込んだのは、自動車やバスの利用が増え、その部品の需要も高まると予想されるからだ。
交通経路の検索ソフト「乗換案内」を運営する19位のジョルダンも、交通需要増で業績アップが見込める会社の一つ。広報担当者は「13の言語に対応した訪日外国人客向けの乗換案内サービスなどに力を入れています」。
これに対し、中止の場合に苦戦が予想される企業はどうか。ゼノ社の関洋二郎社長はこう言う。
「建設業や工事の仮設資材を取り扱う企業の減収、また放映権を獲得する民放各社にテレビ広告需要の減少によるマイナス影響などが予測されました。影響を受ける企業は非常に多岐にわたり、経済的な影響の大きさを改めて認識しています」
テレビ局はCMの収入減が打撃だ。広告業やメディアの仕組みに詳しい作家の本間龍氏は「五輪中止ならば予定していたスポットCMや五輪関連の特番がなくなり、テレビ局の収益は悪化する」と語る。
「五輪開催中は上位ランクのスポンサーは少しでも名前を露出したいと考えるからテレビCMをばんばん打つ。公式スポンサーではない企業でも五輪関係の番組は視聴率が高いから、CMを出してくる。数百億円単位の売り上げを見込んでいたのではないか。民放各局は広告料が主要な収入源だから、非常に困る」(本間氏)
ただし、コロナ禍でスポンサー企業が軒並み大きな打撃を受けたことで、五輪による特需にはもはや期待できないとの見方もある。民放キー局の社員は困惑顔でこう言う。
「すでに広告収入は前年比7割減。仮に五輪を開催しても広告があまり集まらず、放映権料をペイできないのではないかとあきらめムードです。やるも地獄、やらぬも地獄ですよ」
テレビ局がIOCに払う放映権料は、NHKと民放を合わせて660億円(平昌五輪と東京五輪の合計)と巨額だ。広告収入が伸びなければ赤字もあり得る。
「もう東京五輪はお荷物だよね。どのみち、経営の足を引っ張るでしょう」(別の民放キー局幹部)
(本誌・池田正史、吉崎洋夫)
※週刊朝日 2020年10月23日号