決算発表から最初の月曜日のランチタイム、レオパレス本社の社員通用口からはお財布を片手に、きゃっきゃと笑いながら出てくる社員たちの姿があった。何度も危機を乗り越えたせいか、社内は世間の見方ほど深刻ではない様子がうかがえた。

■不動産事業で実績積む

 今回救済に名乗りを上げたフォートレスは16~17年、雇用保険事業の一つとして全国に建てられていた「雇用促進住宅」2911棟10万6318室を取得し、運営に特化するビレッジハウス・マネジメント社を設立している。同社の山下明男会長はモルガン・スタンレー出身で、フォートレスの代表も兼任する人物だ。

 仮にビレッジ社とレオパレスの管理戸数を合わせると、68万964戸(7月時点)となり、業界2位の規模となる。フォートレスが経営に加わることによるスケールメリットと、両者が持つ管理の実務面の力を生かせばそのインパクトは小さくない。信用調査会社・東京経済東京支社の森田幸典副部長は「フォートレスはもしかすると、かなり長期での投資も視野に入れているかもしれない」と話す。

 同じソフトバンクグループのファンドでも、IT投資が主軸のソフトバンク・ビジョン・ファンドが「OYO」や「WeWork」といった不動産事業に手を出して失敗続きなのとは対照的に、フォートレスはビレッジハウスで経験を積みつつあり、レオパレスの経営を軌道に乗せる可能性もある。

 一方、個別の物件に目を移すと、契約見直しでオーナーの収入が大幅に下がったり、場合によってはレオパレスとの契約を打ち切らざるを得なくなったりするケースが考えられる。物件はオーナーが建築し、レオパレスが一定額の家賃収入を保証する「サブリース」という仕組みをとっているため、オーナーの多くは賃貸経営者という自覚が乏しく、レオパレスの保証頼みだった面は否定できない。今後はオーナー自らの主体性と経営者としての裁量が問われることになる。(ライター・吉松こころ)

AERA 2020年10月19日号より抜粋