共産党の「喉と舌」――。中国の新聞「南方週末」の新年社説を当局が改竄した問題は、彼の国が憲法で「言論の自由」を保障しながらも、メディアが党の主義主張を伝える代弁機関に過ぎない実態を白日の下にさらした。奇々怪々な中国メディアの最新トンデモ事情を探った。
中国の記者は当局の監視下にある。メディアに採用されても、党の研修を受けないと「記者証」をもらえない。取材や執筆をするうえで記者証の有無は“生命線”だ。問題行動がなければ毎年1月に更新される。
「現場の記者たちはいたってまともで、情報交換のため外国の記者ともパイプを作ろうとする。でも、党に逆らったら記事を載せられないし、職も失いかねない。ギリギリどこまで書けるか、いつも悩んでいます」(南方週末が所属する広州で取材に当たっているジャーナリスト)
ほかにも、当局主催の「記者研修」はしばしばある。
「2011年に温州市で高速鉄道の脱線事故がありました。その直後に全国の記者が研修と称して地方へ連れていかれ、『苦労している農民や、過疎地で頑張っている医師など模範的人物を取材して報道しろ』と当局から言われました。『事故など取材するな』というわけです」(中国のメディア事情に詳しい桜美林大学の高井潔司教授)
※週刊朝日 2013年2月1日号