「安保法制の時に反対の急先鋒だったのは、全国の学生と学者でした。その後、16年に軍事研究、武器輸出などの分野で産官学が一体となって取り組むという方針を政府が決定した際、真っ正面から反対したのが学術会議だったのです。こうした過程の中で、杉田副長官を司令塔にして政府方針にたてつく学者を排除しようという動きが始まり、実際、この頃から政権による学術会議への人事介入は始まっていたのです」
26日から始まる臨時国会を前に、菅政権は問題にピリオドを打つため学術会議そのものを行革の名の下に再編成しようと動き出している。「なぜ6人が除外されたか」ではなく「学術会議そのものが税金の無駄遣いだ」というご飯論法だ。
「菅政権は行革の必要性を、省庁間の縦割りの壁の打破と言っています。しかし本当に問題なのは官邸官僚による支配であり、重要なのは立憲主義を取り戻すことです。安倍首相は復古主義で、ある意味でこの国をどうしたいか明確だった。しかし菅首相は、携帯料金の値下げ、省庁における印鑑やFAXの廃止など政策の中身は軽薄で、単なる権威主義。人事を駆使して省庁を支配し、屈服させるという陰湿さを感じます」(中野氏)
菅氏の周辺には「首相は忙しくて全ての文書に目を通す暇はない」と「見ていない」発言を擁護する者もいる。しかし本当に問われているのは「誰が、どんな理由で排除したか」だ。野党幹部はこう意気込む。
「結局、説明できないことを強引に押し通せば、モリカケの二の舞いになる。足元が揺らぎ始めたら、菅政権は長く持たないのではないか」
(編集部・中原一歩)
※AERA 2020年10月26日号より抜粋