母乳バンクは寄付金と、血液検査や健康確認を行った人からの母乳の寄付に支えられている。なかには、亡くなった子の教育資金から毎年寄付してくれる人や、赤ちゃんを亡くした後も搾乳を続ける人もいるという。
■ドナーミルクで命継ぐ
神戸大学医学部附属病院は今年6月に初めてドナーミルクを利用した。506グラムで誕生した赤ちゃんで、出生直後は母親の母乳で乗り越えたものの、その後、母乳以外の栄養を受け付けない重度のミルクアレルギーを発症し、飲む量が増えて不足した分を人工ミルクやアレルギー用ミルクで補うと、腹水が溜まってしまう状態になった。他に栄養の手段がなくなったため、赤ちゃんの両親と学内の倫理委員会の承認を得て、母乳バンクからドナーミルクの提供を受けた。藤岡一路医師は言う。
「あの子はドナーミルクなしには成長させることは難しかった。安全性が確保されたドナーミルクの必要性を感じます」
ドナーミルクの提供を受けた赤ちゃんの母親の井垣亜美さん(24)はこう語る。
「子どもが入院中は自宅で搾乳した母乳を冷凍して送っていましたが、子どもが大きくなり、足りなくなってきてしまって。ドナーミルクや先生方に助けてもらって無事に退院できました。感謝の気持ちでいっぱいです」
(編集部・深澤友紀)
※AERA 2020年11月2日号