東大駒場キャンパス  (撮影/吉崎洋夫)
東大駒場キャンパス  (撮影/吉崎洋夫)
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東大の志願動向 (週刊朝日2020年11月6日号より)
東大の志願動向 (週刊朝日2020年11月6日号より)

 来年春の東大入試はどうなるのか。新テストの実施に加えて、新型コロナウイルス感染のリスクもあり、受験者心理に大きな影響を及ぼしている。駿台予備学校と河合塾が最新の模試データをもとに、志願動向を分析。合格のためのヒントを探る。

【東大の科類別志願動向はこちら】

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「過去に例のない事態が起きています」

 こう言うのは、駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長だ。受験では一般的に浪人生のほうが偏差値は高い。しかし、今年は現役生と成績が拮抗(きっこう)している、または現役生のほうが成績が良くなっている教科があるという。

 文科系(文科類)の志願者では、英語で現役生の偏差値が1.2ポイントも浪人生を上回った。地理を除く、数学、国語、日本史、世界史で現役生と浪人生の差が縮小し、国語と数学ではその差は1ポイントもない。文一と文二では現役生と浪人生の差はほぼないという。理科系(理科類)では、全ての科目で差が縮小。英語では1.5ポイント、国語では0.1ポイント、現役生の偏差値が上回った。

 背景にあるのは今回の入試から実施される新テストと、新型コロナの影響だ。新テストを避け、浪人せず進学した受験生が多かった。その結果、今年は浪人生が少ない。また、高校は新型コロナの影響で部活動や体育祭、文化祭を自粛、中止。その結果、受験勉強に費やす時間が増えたと見られる。

「東大を目指す層は、勉強するのが好き、苦ではない。自粛の中、家で勉強をしてきた成果が出ているのでしょう。今の3年生は英語外部試験が導入されるとして英語に力を入れて学んできた世代。特にリスニングで現役生の強さがうかがえる」(石原部長)

 浪人生も自粛の影響で予備校などの指導を十分に受けられず、伸びしろを残していると言われている。気の抜けない展開と言えそうだ。

 科類別に志願動向を見てみよう。

 文科類では法学部系の文一と人文科学系の文三の減少が大きく、1割程度減っている。他方で経済学部系の文二のほうは前年並みかやや増加すると見られている。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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